邪悪なモノ その2
「エステル様!」
倒れかけるエステルを見守っていたマキシムが抱き抱える。
「マキシム...先に...ダンダリオンを...封じる離宮付近までディブを連れてピッピちゃんを回復させて...そしてそのまま...」
そう言いかけてぐったりとするエステル。
エステル自身は加護故に怪我をすることがまず無い、だからこそ『痛み』に弱い。
実体化などピッピちゃんと感覚を共有する事がある意味裏目に出た結果、自身は怪我をしてはいないがピッピちゃんが受けた怪我と同様の痛みを共有してしまい、それに耐えられずに気絶してしまったのだ。
「エステル様!エステル様!!!」
マキシムが青ざめて気を失うエステルを抱きかかえながら声をかけるも、反応が無い。
部屋のドアが開くと、ディビッド達が駆けつける。
「どうしたんですか...って姉上!」
ディビッドがエステルの元へ駆け寄り回復を施すも、目を覚ます様子が見られない。
「姉上自身が攻撃されたわけじゃないから効かないですね...」
ディビッドは自身の力ではどうにもならない事態に眉間に皺を寄せる。
「実体化を会得した時にピッピちゃんと感覚を共有出来る様になったって言ってたっすから、まさかこんな事になるなんて」
「そんな事に...なってたのか...」
青ざめながら話すサミュエルの言葉にマキシムは言葉を詰まらせる。
「マキシム!マキシムは姉上から何か聞かなかったんですか!」
ディビッドが声を荒げてマキシムに問う。
「エステル様はピッピちゃんを助けて欲しいって...離宮へと言っていた...」
マキシムはエステルの言ったことをディビッド達に伝える。
「離宮...離宮ってダンダリオンの封印がある場所か!」
「ああ...」
ジョナサンはマキシムに尋ねると、マキシムは力なく頷く。
「もしかしたらリュシフェルが...兎に角向かいましょう、マキシムはこのまま残って姉上を見ていて下さい、ジョナサンは私と一緒に気を読んでピッピちゃんを見つけ次第離宮に、サミュエルは異端審問官を招集後離宮付近で合流で!」
嫌な予感がするディビッドはそう指示する。
ディビッドは直ぐに自分に割り当てられていた部屋に戻ると夜会の服を脱ぎ捨て、着替え出す。
ガンベルトを腰に装着し、靴もいつものブーツに履き替え、皮のベストを着た後に儀礼用の司祭服を再度身につける。
見た目は儀礼用故にいつもより派手ではあるが、戦闘には支障の無い作りでもある。
着替えが済むと先程の王子様の様な表情は、悪魔を滅ぼす者へと変わっていく。
「早く向かわなければ...」
そう言ってディビッドは部屋を出るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます