邪悪なモノ その1

部屋へ戻ったエステルはセプター オブ バーレを両手に持ち集中をする。


「ピッピちゃん...私の目となって」


エステルの意識はそのまま外で待っていたピッピちゃんへと移動する。


王宮に植えられた木に留まっていたエステルの意識を持ったピッピちゃんは飛び立ち王宮周辺を飛び回る。


かなり広い王宮の敷地、いくつかの宮殿の上を飛び回る。


「ギャ!見つけた!」


空中から周囲を見回すと、邪悪な気配を感じる場所を発見する。


そこは10年前にサヴェリオが封じた悪魔ダンダリオンが眠る離宮。


きっと元はとても美しい場所だったのかもだが、遠目から見ても廃墟のような場所だ。


王の住まいである宮殿等とはかなり離れた位置にあるが、ダンダリオンの事件以降王の現在の住まい等は別の場所に建て直されている為である。


その周囲は厳重に結界を張られているはずなのに、気配が強く感じるのは破られかけているためなのかもしれない。


ぐるりとピッピちゃんが周辺を飛ぶ...何人かが離宮付近へと歩く姿が見える。


「ギャ!人ギャ!」


人影を近くで確認しようとした時、目の前に『何か』が現れる。


『お久しぶリですネ!』


ピッピちゃんを除き込む、深淵の更に深い青い瞳は嫌悪感を漂わせる。


「!」


不気味に笑う男の顔、それは人ではないために宙に浮き、ピッピちゃんの前にいる。


そう、見慣れたあの燕尾服にシルクハット姿の邪悪な存在『明けの明星』リュシフェルだ。


『貴女の介入はちょっト邪魔なのデ』


とニヤニヤと笑いながらリュシフェルはピッピちゃんを片手で捕まえる。


「ギャーギャー!」


『うるさイ鳥ですネ!』


ピッピちゃんが騒ぎ立てもがくが、そのままリュシフェルはニヤニヤと笑いながら大地に叩きつける。


「ギャア!!」


叩きつける音と共にピッピちゃんの叫び声が響く。


『さテ...ダンダリオンの復活を見届けニ行きましょウか!』


ピッピちゃんが地面に叩きつかれた衝撃でぐったりする姿を見下したリュシフェルは、そのままその人影の元へと向かうのだった。


ーーー


「ピッピちゃん!」


その瞬間エステルの意識が自身に戻ってしまう。


「ピッピちゃんを回収しなきゃ...ううっ!」


リュシフェルに叩きつけられたピッピちゃんは無事では無い、ある意味半身に近いピッピちゃんを助けねば、と思うも、自身に生じた異変故に動く事ができない。


それはエステルが急激に自身の意識を戻した為、ピッピちゃんと同じ痛みを共有してしまい、地面に強く叩きつかれたかの様に身体中が痛む。

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