上級異端審問官 その1
数時間後...
ウルムのトラウゴット教のユステ教会内にて。
「姉上が顔出しするのになんで私も一緒に...」
と渋々顔のディビッドがいつもと違う儀式用の司祭服を纏う。
「まぁ仕方ないだろ...まぁマキシムみたいに鎧兜姿じゃあないだけマシだし」
とジョナサンも元の大柄な姿で司祭服をちゃんと着込む。
「あらあら残念そうな顔して~」
とエステルが鎧兜姿のマキシムとサミュエルを連れてやって来る...もちろんエステルはミントグリーンの髪とピンクダイヤモンドの様な瞳に白と青のローブを身につけている...そしてその手にはバーレの王たる証『セプターオブバーレ』がある。
白金でで作られ、柄の部分にはアーモンドの花や実が彫られており、その先端には細かくカットされた青から赤に揺らめく石がはめられて、中には星が煌めいていた。
「やぁ坊ちゃんとガキンチョ!」
「その呼び方辞めろよサミュエル」
サミュエルの呼び方にジョナサンは眉を顰める。
「一応格好だけはきちんとしないとだしね...それに記念式典の時は貴方達全員と一緒に王宮に向かう事になるから」
「そうなの!」
ジョナサンが驚いて目を丸くする、ジョナサンはある意味こう言う場は初めてになる。
「マキシムはどうするんですか?誰か代わりに?」
「いや、暫くしたら兄上もこちらにやって来るからな...それで俺が国に戻ってるって事にしておく話だ...それに大臣やら他の王族がいるからその辺は心配はないさ」
ディビッドがマキシムに尋ねるとマキシムはそう言う。
「王様とエステル様...国のニ大トップがねぇ...」
「そもそも周辺諸国の要人の大半は属国の王や王子だ...免れないだろ、それだけこのウルムって国は強国だって事だ...東の大陸にある帝国と同じくらいにな」
サミュエルがぼやくとマキシムはそう答える。
「まぁ我々は
ディビッドはやれやれと言いたい顔でため息を吐く。
「ちなみに兜被ってる王子様以外のメンバー全員は顔隠してた方が良っすよね」
「そうねぇ、あまり顔を割らない様にはしてる訳だしね」
「了解っす」
とサミュエルは懐から顔をすっぽり隠す白い仮面を取り出して被る。
「じゃあ私達も」
とディビッドとジョナサンも同じ仮面を着けてフードも被る。
どことなく不気味な雰囲気だが、悪魔を倒す事を生業とする上級異端審問官と言う独特の立場を醸し出すには丁度良いかもしれない。
「じゃあ顔見せに行きましょうか...」
とエステルを中心に右前はディビッド、左前はマキシム、右後ろはジョナサン、左後ろにサミュエルが並び部屋を出て長い廊下を歩く。
ウルムの教会トップの司祭長達に顔を合わせる為に。
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