病室にて
そこは病院だろうか...白い部屋で消毒液の匂いが鼻につく場所だった。
腕には点滴を打たれているし、いつのまにか服も病院着に着替えさせられていた。
そして左手には柔らかい手の感触が...
横を見るとバレンティナが座っており手を握ったままうつらうつらと眠っていた。
頬には泣いていたのか涙の跡が残っている。
「ティナ...」
きっと前回よりも長く気を失っていたからか心配させてしまった、とディビッドは思う。
「ギャ!目覚めた!目覚めた!!!」
とやかましいピッピちゃんの声にディビッドは眉をひそめながら身を起こす。
「ん...」
バレンティナが目を覚ます。
「ティナ」
「ディビッド!」
そのままバレンティナはディビッドに抱きつく。
「心配したんだから!貴方倒れてから丸一日目を醒さなかったからっ!」
「...心配かけてすみません...」
抱きしめながら謝るディビッド...何処も悪い所が無いのに倒れては心配されるに決まっているなと再度思う。
「ギャ!1週間寝なくても平気なのに!ギャギャ!」
確かにそう言う訓練されているのではあるが眠い時は眠いしなんだかんだでこっそり寝ていたのは姉には秘密である。
「...神託があったんですよ、どうも私の場合強制的に夢を見るタイプですね」
「ギャ???神託???」
ピッピちゃんがそう言うとすぐにエステルの姿に変化する。
「神託があったの???ディブ???」
「ええ...この短期間に3回、ハイラントの最初の母たる方に会いました...そして聖典の四騎士の1人『白の射手』の原型となったようです」
「!」
「そして目を覚ましたらエルコラーロの地に安寧を与えよ、と命じられました...」
「じゃあ早速エルコラーロに行かなきゃ!」
とエステルが言い出し始めた。
「エステルお姉様、ディビッドの事もう少し養生させてあげて?」
ディビッドを心配してかバレンティナはそうお願いする。
「...ティナは優しいです...可愛いなぁ」
とディビッドは抱きしめる腕を強め、頭を頬ずりし始める。
そんな中エステルはぐいっとディビッドの頬を摘んでバレンティナから引き離す。
「いたたたたっ!えええ...幻影の筈なのに???」
目を丸くして驚くディビッド。
「ディブ!あんたのティナちゃんの無体をどうにかする為にいろいろと苦心してとうとう実体化を習得したのよ!」
「えええ!」
ディビッドは青ざめる、今まではピッピちゃんの突っつき攻撃程度で済んだが、実際の姉であるエステルに関しては敵う筈がない為だ...
まぁ悪魔を秒でぶち倒し、上級異端審問官4人まとめてかかっても絶対倒せない人類最強の女であるエステルにディビッドだけでは無く、誰も敵う筈がないのだが。
「大丈夫よティナちゃん、この子頑丈だから...それにこの子はねぇ甘やかすと本っっ当に調子に乗る子だから気をつけなきゃよ!」
「いたたたっ!」
頬をぎゅううとつねったままで、ディビッドは痛そうだ。
「エステルお姉様...ディビッドが痛がってるから」
バレンティナが慌てて止めようとするもエステルは辞める気は全くない様だ。
「良いのよ!この程度で根を上げる様に育てていないし!」
と更に頬をつねる力を強める。
「それそこ私の分身でもあるピッピちゃんを閉じ込める件から始まって、ティナちゃんにいろいろ無体働いて反省もしてない悪い子には制裁を!」
エステルはそのままディビッドにガッツリとヘッドロックを食らわせ始め、ディビッドが「うぐぐ」と苦しみ始める姿に慌てるバレンティナ。
「お姉様やめて!ディビッドが死んじゃう!」
「ティナ...助け...」
「きゃあ!ディビッドォ!」
がくり...と気絶してしまうディビッドにあたふたするバレンティナ...その騒ぎを聞きつけてマキシムとジョナサンが病室に入ると2人はあーあという顔で有様を見るのだった....
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