アンドラス解放 その1

「『ディビッド!』」


マキシムとジョナサンのうるさい声が耳をつんざく。


「そんなに大声出さないで下さいよ...」


「お前が急に倒れるからだろ?」


周囲を見回すと先程と同じ場所だ。


『病気知らずなお前が急にぶっ倒れたから心配したぞ!この野郎!』


ジョナサンも心配そうな顔でそう言う。


「はは、大丈夫ですよ...ちなみにどのくらい倒れてましたか?」


「ほんの数分だが...」


「...そうですか...」


はぁ...とディビッドはため息を吐く...面倒な事になったなと思いながら。


「どうやら私はアンドラスを倒すようにって『神託』が降りました...どうやら因果に引っ張られているようですね」


「!」


そこにいる全員がざわつく。


「人が組んだ封印式があるのに、リュシフェルが行動するなんてね...それこそ人の組む封印式を解放させる人物でもいるんでしょうか...」


「そんな...」


術士達同士顔を見合わせる。


「流石にウルム国の...サヴェリオ国王陛下の僕たる我らがその様な事は」


ザナージがそう言う。


「悪魔と言うのは『誘惑者』なんですよ...悪い事とわかっていても人を唆して悪事に手を染めさせるんです...その誘惑に打ち勝つなんて、加護があるか並大抵の精神力の持ち主でないと無理なんですよ」


本当に並外れたシルヴィオみたいな書き板を跳ね返すレベルの精神力なんてそうそういないな...とディビッドは思う。


ディビッドは立ち上がりガンベルトから銃を抜き1人の青年に銃口を向ける。


「そこの君...何故私を狙うんですか?」


そこに立っているのはセルジオ ジーナ...その瞳は澱みじっとディビッドを見つめている。


「セルジオ!」


周囲の術士が声をかけるが全く耳にしていない様でニヤニヤと笑みを浮かべる。


セルジオは術士用の細身の剣を引き抜きディビッドへ剣先を向ける。


「綺麗な人...」


「綺麗?」


ディビッドは眉を顰める...あまり人に綺麗だの美しいだの顔の事で言われる事を好まない故だ。


「才能もありその瞳から血筋だって素晴らしく...そして女性よりも綺麗な人」


うっとりとした瞳で見つめながら、そう言ってディビッドの方へ近づいてくる。


「その深い紫の美しい瞳をただずっと見ていたいんですよ...」


と術式を組み出す...あれは封印式!!


「辞めろセルジオ!」


と周囲の術士が止めようとするも、何か壁が出来ているのか跳ね返してしまう。


「逃げてくれ!私がこいつを止める!」


ザナージがディビッドを背にし守る様に自身のロッドを抜き雷の術式を展開する。


『稲妻よ降り注げっ!ブリッツシュラーク!』


ザナージの術式が発動するもセルジオに当たらない。


「何っ!」


セルジオの周囲をよく見ると空間が歪んでいるのがわかる...結界術を自身にかけているのだ。

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