銭ゲバ令嬢、なまぐさ司祭に溺愛される

アンドラス解放 その2

「流石軍の結界術を専門に仕事してるだけある...と言った所ですかねぇ」

ディビッドはザナージよりも前に出て銃口を向ける。

『裁き時は来たっ！悪しき者の頭を砕く裁きの鉄槌を！』

ディビッドは聖典の一節を読み上げるとサンソンの幻影が現れ結界に殴りかかる。

大きくパーン！という音と共にサンソンの幻影が結界を撃ち破る。

「今です！マキシム！ジョナサン！」

そう言うとマキシムが細身の剣を叩き落とす。

『術式展開！エールデケッテ！』

ジョナサンが地属性の拘束術を展開させると地面から鎖が生み出されセルジオに巻きつき動きを封じた。

「まさか身内に敵が紛れ込んでいるなんて...」

ザナージがセルジオを見てそう呟く。

「...いや彼は囮でしょうね...」

ディビッドは全く別の場所に目を向けていた...

「明けの明星...」

目線の先には明けの明星リュシフェルがニヤニヤと笑いながら立っており、ディビッドは銃口をそちらに構える。

『因果！まさに因果！なんてドラマチックなんでショウ！』

「貴様...」

『そう！私が見逃した少年と同じ姿！その紫色の瞳で同じ名前！』

そう...ディビッドには因果の元で絡み合う悪魔はアンドラスだけでは無い。

最初の悪魔たる『明けの明星 リュシフェル』との因果こそがより深い因果なのだ。

それはハイラントが誕生しリュシフェルの頭を打ち砕くまで続く。

「...やはりさっきの神託は間違いないと言う事ですね！」

『アンドラスを目覚めさセ！あの悲劇を再度起こせバどれ程『彼の神』は悲しむのでしょうネ！』

リュシフェルの言葉の眉を顰める、奴の望みはただ一つ...創造者にして忠節なる神(トラウゴット)に対して反逆をし続け神を悲しませる事である。

『神は言う！母鳥の双翼で雛を守るように我が民を守ると！』

ディビッドは周囲を見回し双翼の守りを全員にかけ保護をすると、そのままリュシフェルへとジリジリと近づく。

『神に敵する邪悪な者よ！蝗の軍勢は邪悪な者の領地を食い荒らす！残るものは何もない！』

射程距離内に入ったと同時にディビッドは蝗の災厄の一節を述べる。

大量のイナゴがリュシフェルを囲み襲いかかる。

『グッ！』

「いくら私が『ハイラント』自身ではないとはいえ、神罰を食うならそれなりにダメージは入りますものね」

『フフ...見た目はあの少年と同じでモ、流石にハイラントに繋がルだけありまスネ！』

リュシフェルが腕を振るうとイナゴが散っていく。

「効かない...のか」

「いいえ、間違いなく効いてますよ...まぁ倒す事は出来ないでしょうがね」

マキシムにディビッドはそう答える。