VSフェネクス その1

『まぁ解放させる役は今回私でハないのデ...』


そうリュシフェルは1人の青年に目をやる。


「まさか!」


ディビッドが気付く、そしてその目線にある人物...セルジオの同僚で存在が薄いが、封印式に関しアドバイスを与えていた人物...


その人物は人が組んだ封印式を二つとも解放させ、1人の術士を捕まえて細身の剣を突き刺そうとした状態だ。


「セルジオが人の組んだ封印式を解放する術を編み出してくれたお陰で、残りはアンドラスの封印式を解放する生贄があれば済むからね」


「お前!」


術士数人が仲間を助けようと動くも、周囲がゴゥ!と炎の壁が現れ近づけない。


「さて...アンドラス!贄を用意しましたよ!」


「ぎゃあああああ!」


そう言って捕まえていた術士の胸に剣をぐさりと刺すと、術士は叫び声が響く。


ボタボタと血がアンドラスの封印式に滴り落ちると、パリン!と音を立てて封印が解かれた。


そこからふわりふわりと翡翠石で出来た『禁呪の書き板』が現れる。


「久しいですね、アンドラス...」


術士の遺体を投げ捨て、アンドラスの禁呪の書き板を手にすると、ゴゥ!っと炎がその人物を包み姿を変える、赤い燃え盛る炎の羽根を全身に纏う人型の悪魔へと...


『後は任せましたヨ、フェネクス!』


リュシフェルはそう言ってスゥ...と姿を消していく。


フェネクス...と呼ばれた悪魔は先程刺し殺した術士を地面に捨てると、術士の身体は燃え上がる。


『私はフェネクス、愚かで哀れな人間を救い癒す神』


「神?悪魔が世迷言を」


『コレをご覧なさい』


そう言って燃え上がる術士は...生きている!


「あ...熱い...助けて...」


ズルズルと仲間の術士達に助けを求め這いずりながら近寄るも、その悍ましい姿に恐れ術士達は引き下がる。


『ハハハ...助けてやらないのですか?彼は燃えながら生きてるんですよ?』


「術で...炎を消せば...」


『ああ、炎を消せばこの人物は死にますよ、私の炎のお陰で『生きて』いるんですからね』


「なっ!」


ザナージが青ざめる。


「大尉...助け...て...」


その中でディビッドは眉を顰めながら燃え盛る術士に銃を向ける。


「ディビッド!お前は駄目だ!」


マキシムはそう言ってディビッドが引き金を引く前に術士の背中めがけて大剣で貫き通す。


「ぎゃあああああ!」


燃え盛る術士は断末魔を上げながら絶命する...その瞬間炎が消えて炭化している。


『ハハハ!殺すのですか?』


「...そのまま生きてもただ苦しみもがくだけだろうに...」


マキシムはフェネクスを睨む...


ディビッドは炭化した術士に近寄り浄化をかける...悪魔の為に苦しみもがいた死者を弔う為に。


「...どうか...安らかに...」


そう言って立ち上がり、フェネクスに銃を向ける。


「ディビッド!」


「ジョナサン!全員にディフェンシブを!皆さん絶対あの炎に当たってはいけません!一度あの炎に触れたなら死ぬ事も出来ず燃やされ苦しみにあいますよ!」


「わかった!」


ジョナサンは大規模な術式を組みディフェンシブを全員に付与する。


「幸いな事にここには術士が多いです!全員氷の術式を展開し氷の壁を!築きあげたらすぐこの場を離れてエルコラーロ要塞にいる全員に伝えて下さい!兎に角あの炎から身を守って!」


そう言われて全員が氷の術式を展開し氷の壁を作り上げる。


「貴方達は?」


ザナージが3人にそう声をかける。


「...我々は悪魔を退治する為に存在しているんですのでね」


そう振り向いてウィンクするディビッドを見て、これは確かに女にモテるなとザナージは思い、セルジオを担いでその場を後ににした。


「マキシム!ジョナサン!これより悪魔フェネクスの討伐を開始する!」


マキシムは大剣を構え、ジョナサンは氷の術式を組み始める。


ディビッドの表情ががらりと変わる...上級異端審問官の顔へと...

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