それは貴方の責務ではない その2

「エステル様!」


マキシムさんも泣きそうな顔になってるわ。


「...ティナちゃん...マキシム...ありがとう、ごめんね心配かけちゃったみたいで」


お姉様は身を起こすとマキシムさんに顔を向けるわ。


「マキシム...状況は?そもそも何故貴方ここにいるの?ディブ達は?」


「俺はディビッドに言われてここに残るようにと...」


「私は貴方にお願いしたわよね?ディブと一緒に居なさいって」


エステルお姉様が怒ってる...


「ですが」


マキシムさんが狼狽えるわ。


「貴方の仕事は私を見守る事じゃ無い筈よね?ディブの事を...ハイラントに続く者を悪魔から守る盾となる事よ、判断を誤ってはダメ!」


「エステルお姉様、マキシムさんはディビッドにお願いされたからって...」


「そうじゃないのよ、ただ見守るだけなら他の異端審問官にでも頼めば良い事なのよ」


お姉様は私には優しくそう言うけど、マキシムさんには厳しい目を向けるわ。


「『赤の剣』マキシマム ローエン アルトマン、領分を弁えなさい!貴方はディビッドを守る盾を放棄するならその座を明け渡して王族にっ、王弟マキシマム アイザック エアヴァルドに戻りなさい!」


エステルお姉様の声はとても厳しい。


「...申し訳...ありません...」


マキシムさんが深く頭を下げる...声を詰まらせながら...


「さぁ行きなさい!」


その声を聞いてマキシムさんは兜を被り、大剣を持って部屋を出ていくわ。


「エステルお姉様...なんでそんなに厳しい事を...」


「...マキシムは元々私に対する忠誠心が強いの、自分で自分の首に制約印を刻むくらいに...でもそれではダメなのよ、ディブを守る盾になるのを条件に『赤の剣』の座を渡したのだもの」


「そうなんですか...でも」


「残酷な話かもだけど...上級異端審問官の『白の射手』以外の3人はね、命懸けでディブを守る事が仕事なの、他の3人は変わる事が出来ても、ディブに代わる存在はいないから」


「え」


「ディブは私達の希望...ハイラントの血を繋ぐ為の存在だけど、その片方で悪魔を滅ぼし絶やす使命を受けているの、悪魔の為に呪われて半殺しにあったとしても...でも次世代が産まれるまでは絶対に死なせてはいけない、ならその攻撃から守る盾がどうしても必要なの...それがマキシムでありジョナサンでありサミュエルもそう」


エステルお姉様は真面目な顔でそう話すわ。


「全員納得しているんですか」


みんなディビッドの為に死ぬ事ができるなんて...

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