それは貴方の責務では無い その1

同時間


王宮内部のエステルが居る貴賓室ではただぐったり倒れているエステルにずっとマキシムは寄り添ったままだ。


エステルは部屋に設置されたベッドに寝かされており、その近くには同じ様にぐったりしているピッピちゃんも置かれている。


エステルもピッピちゃんも外傷などは全く無いが、目を覚ます気配が無い。


「エステル様...」


マキシムは兜を外し、ずっとエステルの手を取って目を覚ます事を願う。


そんな時にノック音の後に部屋に入って来た人物...バレンティナとシルヴィオだ。


「お姉様!ピッピちゃん!」


「バレンティナ嬢!」


バレンティナはエステルに駆け寄る。


「一体何があったんだ」


シルヴィオはぐったりと横たわるエステルを見てそう呟く。


「今はそんな事は良いの...ピッピちゃんが復活したらエステルお姉様もじきに目を覚ます筈だから」


バレンティナはそう言ってピッピちゃんに触れる。


「お願い...ピッピちゃん!」


バレンティナは目を閉じて、願いを込める...そうあの時受け取ったピッピちゃんの魂のカケラを返すために。


ーーー


少し前に目を醒めて、急いでエステルお姉様の居る部屋へ向かうの...何故か分からないけどいる場所はわかるから。


「ティナ!目を覚ましたばかりなのに」


「急がなきゃダメなのよ、ピッピちゃんとエステルお姉様が...」


あ、この部屋だわ!


そう思ってドアをノックした後に部屋に入る。


そこには兜を取ったマキシムさんが項垂れている後ろ姿...ベッドの上にぐったり倒れているエステルお姉様がいるわ。


「ティナ!ここは他国の招待客の為の貴賓室で...あっ!」


お兄様が私を止める為に声をかけるけど、お姉様の状態を見て青ざめるわ。


「お姉様!ピッピちゃん!」


お姉様とピッピちゃんに駆け寄る...まるで血の通ってない人形のようなエステルお姉様にピッピちゃん...なんて可哀想に。


でもどうやってピッピちゃんの魂のカケラを戻すのかしら...


『大丈夫だよ、その小鳥に触れて願えばいいから...そうすれば自ずとエステルも目覚めるよ』


何処からか、夢に出てきた女の子の声が聞こえる。


「...お願い!ピッピちゃん!」


目覚めて!死んじゃダメ!お願い!


強く願いながらピッピちゃんに触れると、 冷たくなっていたピッピちゃんの身体がだんだん暖かくなってくるわ。


「ギャ...」


ピッピちゃんが鳴いたわ!


「間に合ったみたい...良かった...」


「うう...」


エステルお姉様も気がついたのか、うっすら目を開くわ。

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