chapter1:Come to help, my knight

いなくなった花嫁

「大変なんです!ティナが居なくなったって...もしかしたらって思って!」


スザンナが大慌てでディビッドの店に来た第一声がそれだった。


「ティナが?」


「なんか一昨日家から帰って一晩明けたらティナが居なくなったって執事の人は半泣きになって探してて!一応憲兵にも連絡してるんだけど...」


昨日は例の事件の後始末で店には戻らず、他のスタッフで回していた...まさか、 とディビッドは思う。


「ごめんね...昨日は買い出しに出ていてここにいなかったから...私も探します」


「ディビッドさん!もし分かったら私にも教えてください!じゃあ!」


スザンナはティナが向かいそうな場所へ探すと言って去っていく。


『封印されし愛欲の神ゼパルの契約、封印の解放に10人の乙女の頭と純潔を、そしてバーレの王の娘の純潔をもって真の力を解放せん』


封印式の内容が頭に過ぎる...そうだ生贄の一族『バーレの王の娘』の系譜...緑の髪と薄桃色の瞳が目印の悪魔からの呪いを受け継ぐ存在。


フールフールの様に襲われても大丈夫な様に作ったお菓子には全て聖化させた水や食材を使って作っていたのに...犯人は悪魔以外かそれとも...


「...明けの明星リュシフェル...」


関わっているのか?ここ数年悪魔の復活が多発している原因、個人なのか組織なのかわからない...燕尾服とシルクハット姿の男である事だけは確実というふざけた存在。


店の2階へ足を運ぶとピッピちゃんが羽を休めている。


「ピッピちゃん...いえ姉上...聞いてますか...」


「ギャ!ギャ!ディブ!遅いぞ!」


「姉上!ティナの居場所を!」


「ギャ!待て!ディブだけでは無理!無理!マキシムもだ!」


「マキシムを待ってたらティナがどんな目に会うか!」


そう言い合っているとガチャリと音がする。


「ディビッド!聞いたぞ、バレンティナ嬢が失踪したって!」


マキシムは鎧兜姿で現れる。


「マキシム!」


「一応見合いした相手だ、情報が入って来たから急いできたって...エステル様!」


ピッピちゃんの前でマキシムは跪く。


「ギャ!マキシム、ご苦労!ヤツが出た!ギャ!ヤツはゼパルの受肉をさせた!ギャ!」


ピッピちゃんがヤツと言う相手はただ1人...最初の悪魔『明けの明星』リュシフェルを指す...そしてエステルが言う時は本物が現れた事を指すのだ。


「ギャ!ヤツはティナちゃんを連れ去った!ゼパルの真の解放のため!ギャ!ティナちゃんに最近因果があった男の元にいる!ギャギャ!」


因果...ティナは『生贄の娘』で18歳になった時点でどうしても悪魔崇拝者に狙われやすい...そして預言には『きっかけとその結果』がどうしても関わるらしくきっかけで1番可能性がある存在はただ1人。


「因果?あいつか?元婚約者のあの種無し!」


「ギャ!」


「グラノジェルス公の...いや今療養中の筈だから領地の屋敷...それか別荘...」


「ギャ!ピッピちゃんわかる!ピッピちゃんについて来い!ギャ!ギャ!」


そう言ってピッピちゃんはマキシムの兜の上に止まる。


エステルは預言者で神託を受ける力以外に悪魔を見つける千里眼の力を持つ、悪魔が解放されたり受肉をした際にそれが強く出る。


「ギャ!ディブ!さっさと着替えろ!置いていくぞ!ギャ!」


「分かってますよ!」


コックコートを脱ぎ捨て、特注のブーツに履き替え腰にダブルホルダー型のガンベルト、防御用のレザージャケットを羽織った上で司祭服を身につける。


腕にある腕章は白い弓矢の紋章が描かれている。

聖典にある審判の時に現れる4人の騎士の1人に肖りそれをモチーフにした紋章だ。


上級異端審問官の証『白の射手』それは異端審問官のエリート中のエリートで4人しかなる事のできない存在の1人。


上級異端審問官『白の射手』ディビッド ザイオン バーレ、その姿に変わると顔つきが変わる。


神からの代理で悪魔を打ち砕く者の表情に...

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