エルコラーロに安寧を その1
次の日...早朝から軍用車に乗ってエルコラーロへ。
私の横にはお兄様といつもの姿のジョナサンとピッピちゃんが、ディビッドは不貞腐れながらマキシムさんと座っているわ。
今回のエルコラーロの被害もあってベルガモ領主の手助けが必要とお兄様も今回着いていく事になったの。
「俺もティナもエルコラーロは遠目でしか見た事が無いからな」
「そうよね」
お兄様も私もエルコラーロへ行くの初めてなのよね。
「ギャギャ?何で???」
「ピッピちゃん、エルコラーロは国の管轄だから、ベルガモ領にあっても軍の関係者じゃないと許可無く入る事が出来ないの」
「ギャ!なるほど!」
ピッピちゃんに教えてあげると納得したのか翼を広げるわ!本当にピッピちゃんは可愛いわよね。
─その一方で...
「...誰よりも知ってるくせに...」
ボソリ...と不貞腐れ気味なディビッドがつぶやく。
千里眼を持つエステル...しかもエルコラーロは姉弟共通の因果の元にあった場所、知らない事は何も無いはずである。
「おい...流石に今回はお前をバレンティナ嬢と座らす訳にはいかないからな...」
今回はシルヴィオとエステルがいる為寝台列車の時の様にバレンティナとべったりとはいかない...それが不満で仕方ないのだ。
しかも前日バレンティナの元へと忍び込もうかとするも、まさかアンナとピッピちゃんがずっとバレンティナの部屋に居座っていて手を出す事が出来なかったのも不満の一つだ...
その不貞腐れ顔をシルヴィオは面白がっているのかニヤニヤしているし、ジョナサンはヒヤヒヤ顔だ。
そんな状態で軍用車はエルコラーロへと向かって行くのだった。
――
エルコラーロ要塞へたどり着く...周辺は瓦礫だらけで荒廃しているのね...
「300年前から荒廃したまま...ヨベルも行わずに血で大地が呪われてしまっている所為で草木も生えない場所になってしまったんですよ」
周囲を見回す私にディビッドは近づいてそう語るわ。
要塞内に入ると血の匂いが...うっ
「ティナは見ない方が良いかもですね...」
要塞内で軍人達がアンドラスの禁呪の影響で仲間同士殺し合いをしていたって話だから...
「来てくれたのだな...」
「ザナージ大尉...今回は災難だったな」
お兄様がザナージ大尉と呼ぶ女性を労う様に語りかけるわ...
疲れた顔のザナージ大尉...きっと被害が大きくて対応に苦慮してるのね。
「仲間同士で殺し合いをして...死者や負傷者も多いが無事に生き残った連中もな...」
ザナージ大尉は溜息をつく。
「怪我などの治療ならお手伝いしますよ...ただ心の傷は治せませんがね...」
ディビッドは治療を...司祭だから回復をさせる事は出来る...でも仲間を殺したり怪我させたショックは消す事はできないものね...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます