ディビッド少年 その2

「君はステンドグラスを見に来たの?」


きっと遠い他の国からやって来た巡礼者の子供なのかもしれない。


「可愛いなぁ」


女の子の頭を撫でる、サラサラで柔らかい、しかし撫でると膨れっ面になる。そんな顔も可愛い。


「ごめんごめん、小さなレディ」


そう言って懐に隠し持ってたクッキーやメレンゲやヌガーを取り出す、全部ディビッドの手作りでバザー用のお菓子の欠けて販売できないものだ。


「È una caramella!」


そのお菓子を見て女の子は目をキラキラさせる。


「あっちに座って、一緒に食べよ」


と礼拝堂の一番前の椅子へ誘導する。


先にディビッド少年が座ってその横に女の子を座らせるとセロファンの包紙を開いて、ヌガーを口に入れてあげる。


「Delizioso!」


女の子はとても喜んでくれている、なんだか嬉しくて更にお菓子を口に入れてあげる。


それにしてもこんな小さい子、なんで1人なんだろう...もしかしたら捨て子なのかもしれない。


捨て子だったらきっと言葉通じなくて困るかも...しかもこの子もロストック系じゃ無いし...ならば自分が面倒を見よう、妹にして可愛がろうとお菓子を口に入れてはディビッドは思い始めた。


「もし君が捨て子だったら僕がお兄さんになってあげるね、そしたらエアヴァルド語喋れるように教えてあげるし、お菓子も食べさせてあげるからね」


きっと言ってる事は通じないかもだけど、女の子はとても喜んでいる。


そういえばこの子の髪の色があのステンドグラスの少女と同じ...もしやトラウゴットの神がディビッドに与えてくれた女の子なのでは?と思い始める。


「神様が与えて下さったのであれば、君は僕の花嫁だったりしてね」


クッキーを女の子の口に入れると、美味しそうにもぐもぐと食べる。可愛い。


そんな時、礼拝堂に誰かが入ってきた。


「Tina!」


赤毛で緑の瞳、身なりのいい少年だ、女の子が笑顔で振り向く。


「Fratello!」


女の子は椅子から降りてその少年に駆け寄る、顔立ちが似てるから兄妹なのかもしれない。


女の子はステンドグラスの少女を指差し、兄と思われる少年にいろいろ話をしているようだ。


仲の良い兄妹のその姿を見て、胸の奥が苦しく寂しい気持ちになる...この子は去ってしまうのか...


女の子は笑顔で振り向きディビッド近づく。


「どうしたの?」


ディビッドがしゃがんで女の子の目線で聞く。


「Grazie Fratello! Ti amo!」


女の子はディビッドにハグをし、頬にキスをしてから、兄の元へ戻って行った。


「Possa tuo fratello essere felice!」


ディビッドは顔を真っ赤にし、手を振る女の子を見送る。


2人が礼拝堂から出てもディビッドはただ立ち尽くし礼拝堂の扉を見つめたまま動かない。


「ディビッド!こんな所に...ディビッド」


司祭ナサニエルがディビッドを見つけるも、いつもニコニコしてるあの悪戯っ子の異変に気がつく。


ディビッドはぼろぼろと涙を流していたからだ。


「どうしたんだい...お前が泣き出すなんて」


ディビッドはナサニエルにぎゅっと抱きつきグスグス泣き続けた...


そこまで悲しくなる理由は分からない...でもまるで女の子が居なくなったら半身を失ったような気持ちにディビッドは苛まれ、暫くの間泣き続けた...


───


「!」


ディビッドは夢から覚める...あの時...あのフラウエン教会で出会った女の子...それはバレンティナ本人だったのかもしれない...


起き上がりカーテンを開ける...朝日が眩しい。


「今日会いに行きますかね...」


ディビッドは花嫁バレンティナが恋しくて会いに行こう、と思う...まぁ夜に彼女の部屋に忍び込むという事であるが...朝っぱらから不健全極まりない事を考えながら顔を洗いに洗面台へ向かうことにする、どうやら彼女はあまり髭面は好みでは無いようだから、念入りに剃らないとと思いながら。


ー終ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る