銭ゲバ令嬢、なまぐさ司祭に溺愛される

闇オークション その2

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屋敷周辺でジョナサンはブカブカな黒の司祭服姿でいた。

ケープの背の部分には他の異端審問官とは違い『黒の天秤』の紋章があしらわれている。

『異端審問官全員持ち場へ！俺はこれから大規模な認識阻害を展開させる、近づいてくる人間の無いように！』

ジョナサンは目を閉じ、深く息を吸い込む。

『解除！』

そう叫ぶと身体中に巡る血管が光る、するとみるみるうちにジョナサンの姿が変わっていく。

背は高く顔立ちも中性的なものから筋骨隆々の男らしい姿に、髪も伸びて隠していた右目も現れるが、その目は真っ赤に燃える炎の色になる、それは聖サンソンを思い浮かべるような姿である。

それもそのはず、ジョナサンの血筋はサンソンの直系にあたるためだ。

サンソンは拳で語る僧兵(モンク)の家系、しかしジョナサンが持って産まれたメインの資質は術士、しかも『赤を宿す瞳』持ちで賢者の称号を持つ事すら可能な能力を持って産まれたジョナサンは、その両方を持つ突然変異である。

ただロストック人の気質はそのままで血の気が荒く、力を常にコントロールしなくてはならない術士には不向きな性格故、ジョナサンは力を抑える為にわざと自身に弱体化の術式をかけて、肉体をひ弱な少年の姿に変容させているのだ。

なので弱体化を解除させると元の姿、年齢相応の姿へ変化するので、何かあった時を考えいつもぶかぶかではあるが本来の姿の時のサイズの服を着ている。

(155センチの細身から200センチで筋骨隆々では服が簡単に破れるため)

ロッドを使う事なく指一本で術式を展開させると、巨大な円陣が現れ屋敷上部を囲い、認識阻害術が発動する。

パッと見は何も変わらないかもだが、何か大きな事が起こっても一般人からは分からない。

『異端審問官は10人、屋敷の中にはディビッド達含め100人程か...』

精神を研ぎ澄ませ、屋敷内部の状況を人が放つ『気』を察知し何処に何があるかをジョナサンは理解する。

ふと別の『気』を感じ上を見るとピッピちゃんが降り立ってくる。

「ギャ！ギャ！ジョニー！ジョニー！」

『エステル様！』

ピッピちゃんはジョナサンの頭に留まる。

「ギャ！奴がここにいる！奴がティナちゃんを攫ってここに連れてきている！」

『ディビッドの嫁が！？』

「ギャ！」

ジョナサンはさらに『気』を感じる範囲を広げる...

『...居た！地下か...もしかして闇オークションに出品されてるんじゃねえのか？？？』

「ギャアアアア！助けないと！」

『しかし...ん！』

ジョナサンは別の『気』が近づいて来ているのを感じ取る...

『なんて独特な『気』だ...え？異端審問官がやられた？？？屋敷に認識阻害術を使ってるのに誰かが勢い良く突入しようとしてるっぽいぞ！』

数人の『気』の内、きっと感じとる大きな『気』の1人はアークメイジだろうが、さらに独特の『気』を発する人物がいる...一体誰だ？

「ギャ！ギャ！ジョニー！屋敷に突入しろ！」

ピッピちゃんに促されジョナサンは屋敷の方へ向かった。