闇オークション その1
空は暗くなり、周辺の人通りも少なくなる。
新興貴族のソルディーニ子爵の屋敷...まぁ金を積んで貴族籍を得た成金なのだろう。
やたらと金を注ぎ込んで作った広い屋敷がなんとも悪趣味極まりない。
「随分と悪趣味な建物ですねぇ...」
ディビッドはそう呟く。
その姿はいつもと違い、モーニングスーツを見に纏い、髪色を金髪に変化させている姿は、まるで貴公子の様である。
「ちゃんとマスクも被れよ...」
と赤い髪に変わったマキシムもモーニングスーツ姿だ。
ウルムの流行りのスタイルで2人ともスマートな印象である。
「ええ」
そう言ってマスカレードマスクを着けると目の色も変わる。
「さぁて...行くか!」
2人は屋敷に入っていく...これから始まる闇オークションへ参加する為に。
─
オークション会場は地下にあり、劇場ような作りにしている場所である。
柱は金色に、壁は赤く塗られており夥しく盗品の絵画などが飾られているし『商品』を見せるための舞台も何とも悪趣味な装飾を施されてる。
「何とも大掛かりな作りを...」
「それだけ稼げるんでしょうね...」
闇オークションで出品される商品は様々である...盗まれた美術品、攫ってきた奴隷、違法の呪具などだ...
今回の目玉は間違いなく『禁呪の書き板』だろう。
『禁呪の書き板』は悪魔の心臓そのもの...しかし得られる栄光は大きい...贄を与え力のみを扱う事が出来れば巨万の富、知恵や知識、美しさや力など得る事すらある。
今回オークションで出品される『禁呪の書き板』は悪魔グシオン...知恵と栄光を与える神という肩書きを持つ。
術士として伸び悩む者なら...どんな手を使ってもと思うなら喉から手が出る程欲しいだろう。
人も多く、全員が素性知らせない為にマスクを着用している。
性別も年齢も様々だが、大体は貴族や富豪と言った所だろう。
金髪はそこそこいるが、豪奢に見えるディビッドの姿を見てひそひそと話し声が聞こえる。
「一体何処の貴族の子息だ?」
「あんなに美しい姿マスクをしても...」
「むしろ私の愛人に」
胸糞悪い会話が飛び交う姿にディビッドはため息をつく。
「さっさと終わらせてティナに会いたい...」
「まぁ仕方ないだろ?」
「穏便にですか?」
「そう言う事だ」
番号を受け取り、席に着く。やや後ろの席である。
「何となくマスクをしてても誰だかわかりますか?マキシム?」
「ああ...数人はなぁ...あの太った男、あれはマンティエロ伯...噂じゃ何人も奴隷にした女を囲っている下衆だな、あとそれこそあれはグラノジェルス公???息子がああなったのに懲りない奴め」
マキシムは以前バレンティナを助けた時の例の公爵の趣味を思い出す、サディストで愛人を囲っていた屋敷の道具を思い浮かべてうわぁ、と思ったものである。
「お喋りは終わりだ、はじまるぞ」
───
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