サミュエル その2

やらかす方向性はなんとなく似ているが、どうにもディビッドとサミュエルは馬が合わない。


性格は兎も角なんだかんだで信心深く思考のベースは聖典基準のディビッドとは違い、サミュエルは元々ストリートチルドレンで犯罪組織に片足を突っ込んでいた過去からか享楽主義で自身の興味とエステルに対する畏怖の念だけで動く男だ。


「まぁ個人的には、坊ちゃんが夢中になってる女の子を...ってその薬指!!!」


ディビッドの左薬指の婚姻の契り印に気がつき目を丸くするサミュエル。


それを意味する事くらいは知っている、自身の首にもある誓約印に似たモノであり、かなり色が濃くなっている所から死ぬくらいでは解けないまでになっている。


「はぁ?馬鹿なんすか???坊ちゃんはハイラントの血を継ぐんでしょ???その女の子とだけしか子供作れないんてとんでもないリスクっすよ!その子が妊娠しなかったらどうするんすか???これじゃあ離縁して再婚すら出来ないじゃないっすか!」


「姉上の預言でティナとは5人子供が出来る事になってるので心配無いですよ...それに私はティナが嫌だって言っても離縁なんてしませんし」


「はぁ...まさか聞き齧っていたレベル遥かに超えている執着っぷりにびっくりっす」


サミュエルは膨れっ面をしている目の前の色男に呆れ顔だ。


でも確か実の父親に不貞の子供と捨てられた過去もあるからかも...とサミュエルは思う。


だからその二の舞にならない為にもそんな事をしたのかも知れない、誰にも手を出せない様にって意味で。


「夫婦とは一体なんですよ、普通は」


「でも坊ちゃんの場合は特別なんすよ?それこそ色とりどりな美女集めてハーレム作って子作りに専念すりゃあ...」


「私はそう言う下品な事はしたくありません!」


「坊ちゃんのそう言う所...何気に潔癖っすよねぇ」


怒るディビッドにサミュエルは分かってますよと言いたい顔をする。


昔から、それこそフラウエン教会から連れてこられた時から知っているサミュエルはディビッドがずっとモテていたのを見ていた。


でもそれをディビッド自身はあまり良くは思っていない事も知っており、コンプレックを持ってる事や身体中の傷自体誇りだとも思っている事も...ただその見た目を器用に使う狡さも持っているのもだ。


「...坊ちゃんは教会にとってもエステル様にとっても大切な存在だって事忘れないで欲しいところっす...」


サミュエルはため息を吐く、同情の余地はあるが自身の過去も過酷なサミュエルはある意味誰よりも恵まれたディビッドに甘ったれめ、と心の中で思いながら....

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