王宮にて その1

ヴェナリア王宮内...エマヌエーレ・サヴェリオ=ウルム国王陛下の謁見の間。


世界でも有数の巨大国家でもある為荘厳な内装であり輝かんばかりである。


金と碧玉であしらわれた豪奢な玉座には絶対君主であるサヴェリオが座しており、そのアクアマリンの様な瞳は一点を...ザナージ大尉を見つめていた。


身をかがめ、ただ下を向く事しか出来ないザナージ...仕方ない、結果云々一度でもエルコラーロを守ることが出来なかった事実は大きい...処罰は免れない。


「フェネクス並びにアンドラスの悪魔の撃破...エルコラーロの地の回復...そして兵士達の復活の奇跡...か、そうであっても一度は兵士を失いエルコラーロ要塞から悪魔アンドラスを解放した事実...場合によっては近隣のベルガモまで被害が及びかねない事態はな...」


「申し訳ございません...」


「しかも受肉した術士は封印式の解放を密かに研究していた事...その技術を悪魔リュシフェルに知られた可能性がある...これはかなりの痛手だ」


「何も言う事はございません...」


「...エリデ...お主とは長い付き合いでもあり、あの憎きダンダリオンを封じた盟友でもある...だとしてもこの失態は消えぬ」


「どんな処罰も受け入れる所存です...」


「潔いな...本日をもってエリデ ザナージよお主の職を解く...その能力故に王都から出ることを許さぬ...多くは無いが退職金を出してやろう...家でも建て寄宿舎通いの息子と余生を過ごせ」


「そ...それでは罰には...」


「偉大なるウルムの軍人としての地位と名誉を失う事ほど不名誉な事はあるまい?」


「確かにそうですがこれでは...」


恩赦だ...この絶対君主のサヴェリオ国王がそんな生易しい事を赦すのか?とザナージは驚く。


そんな顔を見てサヴェリオはニヤリと笑う。


「...『白の射手』にな、一度に悪魔を2体倒した暁にいつもの報酬以外に何を希望するか聞いたのだ...そしたらあの者何と言ったと思う?」


「?」


「今回はエルコラーロ要塞の兵士達に温情をと言ってきた」


「なっ!」


ザナージは驚きを隠せない。


「エルコラーロの...アンドラスとの因果を断ち切った事が関係しているのか?と聞いたらその件で処分される軍人達が可哀想だと言う恋人を泣かせたくないとの事だ、くく、まさかシルヴィオの妹バレンティナにかなりご執着の様だな...」


「確かに側から見ても只ならぬ仲だとは見て取れましたが」


ザナージはエステルに半殺しの目に会い、バレンティナに怖い怖いと張り付いていたディビッドの姿を思い出し苦笑いを浮かべる。


「エリデ、『白の射手』とバレンティナ嬢に感謝するのだな」


「はい」


ザナージは頭を深々と下げた...『白の射手』に部下を生き返らせた件も自身に対してしてくれた事も感謝しながら。

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