銭ゲバ令嬢、なまぐさ司祭に溺愛される

アンドラス受肉

「何てことを...」

ディビッドは右の銃を上に向け浄化を全体にかけ始めると、争う人々が次第に落ち着き出す。

「禁呪...ですね」

眉を顰めながら人々が争っている場所で浄化を行う。

「一体...これは...」「仲間になんて事を...」

そんな声が聞こえるがそれは今はお構いなしだ、兎に角エルコラーロ要塞内での禁呪の効果を打ち消していかねば！とディビッドは行い続けた。

先に進むとザナージが廊下で倒れていたのを見つける。

「...まだ息がありますね」

そうディビッドは言ってヒールをかけ回復させる。

「大丈夫ですか？」

「ううっ...セルジオが...急に...フクロウみたいな姿の悪魔に」

「...やはり...」

どうやらフェネクスはセルジオにいつの間にか禁呪の書き板を渡していた...いやその書き板そのものがセルジオを選んで取り込んでいったのかもしれない。

「きっとアンドラスの受肉の媒介になったのでしょう...セルジオは？」

「それが...天井を突き破って...」

と上を指差すと天井が突き破られて穴が空いているでは無いか！

「何て事だ...」

きっと悪魔アンドラスは生贄を求めて人のいる場所へ...1番近いベルガモへと向かっている筈...悪魔の習性としてそうする筈である。

「アンドラスの生贄には前回受肉に扱われた賢者レベルの血肉が必要...しかし私は生贄には相応しくは無いと捨てていった...ベルガモでは賢者レベルの術士は居ないはずだが...」

ザナージは賢者でそれこそサヴェリオ陛下と共にダンダリオンを封じた程の能力を持つ人物だ。

そうそう彼女レベルの術士はいない筈だが、彼女よりも...と探すもそうそう居ない。

「...しかしそれを贖える存在もいるんです...古来より悪魔が生贄として認めた『生贄の娘』の血肉を...」

ディビッドの左手首に結ばれた赤い組み紐がチラリと見える...そう...今ベルガモに居るのだ...

「ティナが危ない...」

『急いで戻られねぇと！』

ジョナサンが担いでいた術士を降ろす。

「マキシム！車運転出来ますよね！」

ディビッドはマキシムの顔を向けてそう聞く。

「おう！」

「ザナージ大佐、軍用車を貸して下さい！急いでベルガモまで戻ります！」

「わかった...鍵は運転士が持ってるはずだ...運転士が無事なら彼を使っても良い」

ザナージはおでこを片手で押さえながらフラフラと立ち上がる。

「我々も時間を置いたら動ける人間を集めて、禁呪対策を整えてから加勢する...済まない...こちらの被害もまだ分からんから」

「...わかりました」

確かにアンドラスが生贄を得てベルガモに大きな被害を及ぼす事態を避ける事もだが、何よりも大切なバレンティナを...ディビッドの唯一であり、神から与えられた花嫁を失う事態だけは避けなければならない！

「どうか...神よ...我が花嫁を...どうかバレンティナを守って下さい...」

左手首の結ばれた赤い組み紐を見て目を閉じてディビッドは祈る。

祈りを終わらせ...立ち上がる。

「ベルガモへ戻りましょう！」

ディビッドはそう言ってマキシムとジョナサンと共にエルコラーロ要塞の出口へと向かって行く。

一刻も早くベルガモへ...バレンティナを守る為に。