夜会前 その3
その後エステルとアーヴァインは別室へ戻ったのでディビッドはソファーから立ち上がり、用意していた服を取り出す。
「何だか解せません」
ディビッドは儀礼用の司祭服を脱ぎながら呟く。
「解せないって...エステル様の件だよな」
「どうも姉上のやり方じゃない」
ジョナサンの言葉にディビッドはそう答える。
「お前もそう思うのか?」
「別に結婚なんてしなくても、公表の件は進んでいた筈なんですよ...どちらにしろ悪魔を秘密裏に倒し続けるには限界があったんですから」
マキシムの言葉にディビッドは用意されていた着替えを出して見に纏いながらそう言う。
「それにティナの立場が如何とか言ってますが、政治的な事を持ち出して私にあんな立場に着かせるなんて面倒な事になりかねないし」
その服はエアヴァルド王族が身に纏う深い藍色のロングコートだ。
襟や袖のそこかしこに銀糸で刺繍されており、よく見るとアーモンドの花と枝である事が分かる。
「なぁ...何でお前そんな格好すんの?」
ジョナサンが疑問を口にする。
「夜会に出るんですよ」
「?」
「さっきも話したでしょ?私は面倒な立場に着かせられたんです」
「夜会ってお前ダンスとかすんの???」
ジョナサンは目を丸くする。
「そのくらいの嗜みは有りますよ...相手は常に姉上でしたがね」
その姿はそれこそ麗しい王子様そのものの姿だ。
「坊ちゃんっ王子サマより王子様じゃん!」
サミュエルが指差しながらその姿を見てゲラゲラと笑う。
「うん、確かにマキシムより王子様だわ」
ジョナサンも頷く。
「まぁそれっぽく見せてるんですからね」
正直こう言う格好をしたくは無いが、姉であるエステルをエスコートしてサヴェリオの元へ連れていかなければならないからだ...そして自身の今の立場を明らかにさせる事も込めてである。
あと、今夜かわいい愛しのバレンティナの元へ向かうにはこの姿と立場は必須だ、仕方ない。
それにバレンティナ本人の選んだドレスのサイズを改変させて、用意したドレスを着せる為に手を加えて自分好みのドレスを用意した、外見はともかく中身がどうしようもない残念な男であるが...
しかもディビッド自身のモノとアピールするかの様な紫色のドレスだ。
本当なら誰にも見せたくは無いのがディビッドの心情ではあるが。
「まぁマキシム達は姉上の護衛役に徹して下さい」
ちなみにマキシムは実際本国に戻っている設定であるため、鎧兜姿のままでいる事になる。
それと同じくジョナサンとサミュエルもである。
着替え終わったディビッドはソファーへ座る、別室で姉エステルの着替えをし終わるのを待つ為に。
「まぁ女性の着替えは時間がかかりますからねぇ」
とつぶやきながら。
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