怨み持つモノ その1
そこは日の光も入らないカビ臭い地下だった。
中は広間になっており、古代の祭壇のような作りである。
「10年...10年だ...」
高齢と思わしき血で汚れたローブを着た男が、その手に翡翠石で出来た板...悪魔の心臓でもある禁呪の書き板を両手で持つ。
その老人の周囲には生贄として大量の老若男女の死体が転がっていた。
身体中の水分を搾り取られ、まるでミイラのような姿だ。
その数は12体、そしてその真ん中には封印式が破られており、ガラスのようなかけらが散らばっている。
「憎きあの戦う事しか知らぬ若造をこの手で...くくく...」
男は禁呪の書き板を、ローブをはだけさせて骨と皮ばかりな自身の胸に当てるとズブズブと身体に入っていく。
すると男の姿が変化する...しわだらけの老人から若い姿へと変化していった。
その髪は黄ばんだ長い白髪から銀色へ、白内障で白く濁った瞳はアクアマリンのような色へ、肌も若々しくなっていく。
「くっ...くくく、我をあの忌々しい塔に縛り付けたサヴェリオ!待っておれ!正統な王が我と言うことを思い知らせてやるわ!」
若返った男は高笑いする...
その姿はウルム王家特有の色を持っており、顔立ちは美しくサヴェリオに似ている、それもその筈彼はサヴェリオ国王の叔父にあたる男ベネデット大公だった男...
第五王子の母を唆した罪で王都の終身刑を言い渡され、王族が幽閉される塔に居たはずの男だったからだ。
『成功されまシたカ!』
ベネディッドの前に姿を表す一人の慇懃な男の姿。
いつもの様に燕尾服を身にまとい、シルクハットを被った美しい青年の姿だが、その笑みは禍々しい。
明けの明星リュシフェルだ。
「ああ!この通りだ!以前よりも力が漲るわ!」
『そうでしょウ!サロスの力と相性がとても良イようでスから準備した甲斐ガありましタ!ふふふ』
「あの塔より我を救い、この地に連れ出してくれた事、褒めて遣わすぞ!王位を取り戻した暁にはお主に褒美をとらせてやろう!」
『ありがたキ幸せ!偉大なウルムの王に相応しいノは貴方のみ!ベネディッド
「ははは!」
『さぁ王都へ向かいましょウ!陛下のその強大な力でサヴェリオから王位を奪うのでス!』
リュシフェルは唆す...その目的は悪意を持って世の中を混沌へ導き、唯一の存在『創造者にして忠節なる神』に注目して貰う為にだけに...
公正に全ての生きとし生けるものに愛を示す神の
『さァ...ベネディッド...いえ『愛の神サロス』よ...貴方がこの国の王となリ、貴方にとって
リュシフェルは高笑いするベネディッドを見つめながらそう呟くのだった。
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※本来なら一番最初に入れるべきだった話かも...
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