封印式 その3
「まぁそうだな...」
この程度は交渉材料ですらないと言いたいのか...この目の前の色男は、とザナージは思う。
『白の射手』と呼ばれる目の前のアメジストの相貌の色男...それこそサヴェリオ国王陛下が怒りを宿した時と同じ色だ。
その色は英雄マテウスの息子と同じ...その事自体サヴェリオ国王陛下は大層喜び、この目の前の色男の事をとても気に入っているのは知っている。
術士では無いが『神罰』と呼ばれる通常の最高位術式以上の威力を持つ特殊な術を操れる異能持ち、そして唯一悪魔の心臓とも言える禁呪の書き板を砕く事ができる存在。
そして横の『赤の剣』と名乗った仮面男はきっと『剣聖』と呼ばれているエアヴァルドのマキシマム殿下、もう1人の『黒の天秤』ジョナサンと呼ばれた大柄の男は拳闘士でありながらその瞳に『赤を宿した』所を見ると実際は『賢者』の称号持ちクラスの術士...
小国エアヴァルドの宗教でしかないだろうに何とも恐ろしい連中を飼い慣らしているものだ...対悪魔戦のみにしか使わない力をもし人に向けるなら...と思うと背中がざわつく。
しかも上級異端審問官は4人おり、これら3人のレベルの仲間がもう1人...
そして彼らを従えるのは表向き教皇となっているが実際はトラウゴット教のトップに君臨しているであろう『預言者』エステル...全てを見抜く千里眼を持つ得体の知れない女、この目の前の男達がまとめてかかって行っても敵わない程の強さを持つと噂されている存在だ。
悪魔を恐れず倒す事に特化した底知れぬ化け物共め...とザナージは心の中で呟いた。
「まぁ今日は顔合わせも兼ねてだ、実際の話し合いや封印構築などについての詳細は明後日以降、長旅だっただろう、ゆっくり休んでくれ」
「ではお言葉に甘えて」
ニコニコと笑顔を浮かべる『白の射手』一体この男なかなか掴みどころの無い男だな、こんなニコニコしていても何を考えているのかさっぱり分からないな...とザナージは思う。
まぁ実際の所ディビッドはこんなむさ苦しい場所から離れてさっさと愛するバレンティナの元に戻りたい一心ではあるのだが。
そしてきっと目の前の軍人であるザナージには、ディビッドが大体碌な事を考えてないのは全く分からないんだろうなぁと、マキシムは仮面の下で苦笑いを浮かべていた。
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