第560話 秘密基地への来客3

「シャドウとフェザーが帰国すると寂しくなるわね」

「王都で一回お別れをしたつもりだったのに、再会するとやっぱり、ね」

「シャドウ達の国では、みんなが黒髪なんだよな?」

「そうだな。黒目で黒髪ばかりだな」

「色々と文化も違いそうだし、鍛治の技術を見てみたいな」

 ヨルクの何気なさそうな発言に、皆がハッとする。


「なんだよ!」

「ヨルク、たまには良いこと言うじゃない」

「タマってなんだよ」

 以前に王都で別れたときには、自分達はトリアンから逃げて来た背景があった。しかし、“蒼海の眼”や“闇ギルド”の件も、このストローデ領の独立騒動と一緒に終えることができている。


「継ぐ家がない私達なら、見知らぬ他国の情報は大きな糧(かて)になるんじゃないかしら」

「あら、ゾフィ。継ぐ家があっても色々と学ぶことはあるわよ」「ねぇ、フェザー。工芸も色々あるわよね?」

「え、えぇ。もちろん。お土産になるようなものも作っているわよ」

 この兄妹のことをインディアンやアイヌのようだと、こっそり思っていたユリアンネはドリームキャッチャーや熊の木彫りを思い出す。木彫りの熊は北海道土産ではあるがアイヌと直接は関係ないことを知らないからである。


「ユリも、薬とか気になることはあるよね?」

 こっそり別のことを考えていたので動揺するユリアンネ。

「え、えぇ。そうね。グリーンリーフさんに教わったような薬、もっと知りたいわ」

「じゃあ、決まりね!船が動けるようになったら、2人の帰国に一緒に付いて行くわよ!」

「え?」

「うーん」

 特にシミリートは、流石にここで再び旅立つならば、衛兵の職は辞める覚悟が必要だろうと考える。その他にジーモント達も親の説得には自信がない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る