第499話 吸血ダガーの正体

「それよりも、あの≪吸血≫ダガーはどうするか決めたの?」

「それが……」



 “闇ギルド”の拠点への踏み込みなどが落ち着いた後、秘密基地で武具などの手入れをしていたときのことである。

 ≪吸血≫ダガーをシミリートが手入れしようとすると『お前ではない』と、また聞こえたのである。

「え?何も聞こえなかったわよ。シミ、脅かさないでよ」

「そんな。じゃあ、ユリも持ってみろよ」

 手渡されたユリアンネが持った途端に

『お前だ。見つけた!』

と彼女の頭の中に聞こえてくる。思わず手からダガーを落としてしまう。


「聞こえた……」

「だろう?」

「でも、お前だ、見つけたって」

 シミリートが再び拾うと『お前ではない』となるので、再度ユリアンネに渡される。

『お前だ。我の主はお前だ。我にもっと血を、魂を捧げよ』

「何を言っているの!あなたは誰?」

『我が名はベリス。この短剣に封印された悪魔である』

「どういうこと?」

『口に出さずとも良い。念じれば会話ができる』


 それからユリアンネが念話で悪魔ベリスから聞いた内容を皆に共有する。

「経緯は教えてくれないけれど、このダガーには悪魔が封印されているみたい。で、魔力のある魔物や人間の血を吸ったりすると力を回復していけるらしいの。このダガーで殺した相手の魂を入手すると力が大幅に増えるらしくって。この前、これで誘拐犯を殺したのをきっかけに念話ができるようになったみたい」

「俺ではなくユリだって言うのは?」

「見出したのが私だし、魔力の高い魔法使いを主と認めたいみたい……」

「わがままな……」

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