第396話 ニキアスの機嫌

 冒険者ギルドからすぐに魔術師団のニキアスがいる宿に来たシミリート。

「確かに金級冒険者、“流星”の二つ名のエックハルトさんとその相棒の銀級冒険者である精霊魔法使いのシグランさんは頼もしいです。願ってもない協力者です」

「ならば、お二人には特別に個別報酬をお願いしますね」

「シミリートさん……そうですね。わかりました。こちらの紙をギルド職員にお渡しください。他の方のやっかみも面倒なので口頭ではなくギルドの方を経由でお願いします」

「流石はニキアスさん」

「そのような言葉はなくて大丈夫ですよ。……リーダーにはそのような強引さも必要なのでしょうかね……」

 珍しく少し怒った感じのニキアスだったが、最後は誰に対するため息か。


「ところで、ユリアンネさんも、というのは他にも何か?」

「いえ、そんなに構えられなくても。ユリが使い魔を入手できたので、人工生物の使い魔を持たれている先輩がいたら、とついて来ただけですよ」

 シミリートの言葉に合わせて、腕輪にしていたワイバーン型の使い魔シルヴィスを元の姿にして肩にとまらせるユリアンネ。


「え!?あ、先日のワイバーンですか。そうですか、流石は“薬姫”ですね。見事ですね。これほど細部まで再現しているということは相当な魔力を込められたのでしょうね。強度も期待できそうですね。で、ご要望の人工生物の使い魔ですが、今回の15人の中には残念ながらおりません。ご存知のように私には鳥の使い魔リンがおりますが、他にも鳥の使い魔が居るのが1人だけでして……」

「意外と少数なんですね」

「素材のミスリルも大変高価ですし、普通は地龍(ドレイク)や飛龍(ワイバーン)の血なんて入手が困難なんですよ。もちろんそれら亜龍ではない龍(ドラゴン)なんてもっと、です。例え貴族などでお金があっても、儀式魔法の発動の方も大変ですし」

 さらにニキアスの地雷を踏みかけたのかもしれないと早々に退散する二人であった。

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