第348話 魔術師団の要請

 少ししてオテロ・フェルバーも入室してくると、彼も変わらず丁寧な口調のままである。

「また助けて欲しい事態になっているのです」


 ここだけの話ですが、とストローデ領が独立を宣言したことをフェルバーが話し出す。

「皆さんが迷宮都市トリアンの出身であることも伺っています。そのため微妙な立場であることは認識しておりますが、地元ならではの情報提供にも期待して、再び私の隊に臨時分隊として参加して欲しいのです」

「……我々の力を評価頂いたお話であること、ありがたく存じます。ただ申し訳ありませんが、それは……」

「やはりトリアンの出身だからですか?」

「はい……」

「……では、ストローデ領までの冒険者としての護衛任務ではいかがでしょうか?大勢の軍隊が移動するのは時間がかかるため、まず情報収集をするための騎馬による先発隊が今回も組まれることになりました。その少数メンバに対して、騎馬で移動が可能で、我々としても信頼ができる冒険者に依頼したいのです」

 ニキアスがこちらのことも考慮した落とし所の案を提示してくる。


「それならば……」

 シミリートが仲間達の顔、特にユリアンネの表情を確認する。

「正直言いますと、ジーモントさんの料理が無いと嫌だと隊員達が訴えて来ているのです。今回も料理を含めてお願いしたいのです」

「承知しました。では、冒険者ギルドで契約の方をお願いします」

 ジーモントの苦笑いも確認した上でシミリートが答える。


「ちなみに、ですが。魔術師団員は、フェルバー中隊の中でも騎乗できる者となりますと、前回メンバが半数になります。騎士団員は我々と一緒に行動するのが嫌と明言しておりますので、面倒は少ないかと……」

 少しだけ安心材料の情報を聞いてホッとするユリアンネ達。北の国境へ一緒に行った魔術師団員であれば既にジーモントが胃袋をつかんでいるし、騎士団員がいない方が安心である。

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