第129話 メイユへの護衛
翌朝、西門に集まったのはそれなりの規模の商隊であった。
荷馬車が3台と自身の乗車用馬車が1台という組み合わせの商人が2組、それぞれ主人がディッキーとベンヤミンという。魔の森の脅威を踏まえて、少しまとまった集団になった方が良いということで、ここでは複数の商人が共同で護衛を雇うことも良くあるらしい。
そしてその護衛である。“選ばれた盟友”の6人以外に2人組と6人組であった。
まずは、シミリート達が街で見かけた珍しい風体の黒髪黒目の男女2人組。2人とも口下手のようで、兄の名前がシャドウ・ホーク・ムーンで銅級冒険者、妹がフェザー・ハート・ダンスで鉄級冒険者ということを何とか説明していた。
兄が連れている鳥はどうも鷹のようで名前はフィアというらしい。兄は魔物使い、テイマーのようだが、従魔契約らしいことはせず、そのため首にも従魔の証を下げていない。しかしそれで昨日のような騒動になったのだと思われる。兄妹が二人で乗る馬、名前はホーというらしいが、この大きな馬も従魔の証がない。鷹も馬も通常の動物に見えないこともないが、どうも魔物ではあるらしい。
もう今から出発するので、このコルバックの街では今更だが、今後のことを踏まえて次のメイユの街では従魔登録をした方が問題にならないということを、衛兵の知識と対応力でシミリートが2人に丁寧に説明していた。
そして護衛のもう1組の6人。
男性4人と女性2人。その女性の1人が発言する。
「私はアディーレ。銅級冒険者で見ての通り片手剣(ショートソード)を2本使う。この長剣(ロングソード)がヘンドリク。そっちの広剣(ブロードソード)と丸盾(バックラー)がエナンド。短弓(ショートボウ)と片手剣(ショートソード)がイルヤ。この地方では珍しい曲刀(シミター)を2本使うのがバーレット。そして片手剣(ショートソード)と予備で短剣(ダガー)なのがウナ。ウナはヘンドリクの彼女で、残りの男達もヘンドリクの友人、そしてそのヘンドリクは私の愚弟だ。私以外の5人は鉄級冒険者だ。よろしくな」
昨日、女性陣をナンパしていた顔役の息子と名乗ったのがヘンドリクであり、取り巻き3人も昨日見た顔である。その男性4人で冒険者パーティー“御手(みて)の大剣”と言うらしい。
ヘンドリクはカミラ達にこっそりと、内緒にしておいてというジェスチャーで両手を合わせて来る。
「ヘド、何をしているの?」
「ウナ!何でもないよ」
「そぅお?なら良いわ」
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