第462話 久しぶりの実家
「良かったの?」
“満月の宿木亭”のある高級街から港街方面へ歩いている6人。カミラたち3人が前を歩いていて、ラルフ、アマルダ、そしてユリアンネは後ろについて行く。そのユリアンネに聞いてくるアマルダ。
「うん、心配かけてごめんなさい。でも、いつまでも宿屋にいるとみんなが心配すると思うし。私の部屋、まだあるのよね?」
「あぁ、もちろんだ。アマルダがたまに掃除をしてくれていたぞ」
「ありがとう……」
普段通りに、と思っているが、少しのことで感情がたかぶってしまうのは抑えられない。
それに気づいたラルフとアマルダがそっと左右から肩を抱いてくれ、さらに涙が止まらない。
その様子に気づいたカミラたちも歩みを止めるが、余計な声かけはしない心遣いがありがたい。
「もう大丈夫よ。帰りましょう」
少しして落ち着いたユリアンネが歩き始める。
養父ラルフの薬屋“木漏れ日の雫亭”の前に到着し、改めてその姿を見ると、またしても感情が刺激される。
1歳くらいのときに孤児院からこの家に引き取られてから、10歳で“オトマン書肆(しょし)”に住み込み見習いに出ていくまで暮らした実家。
王都から戻ったときに少し立ち寄ったときにはそれほど感じなかったが、5年ほど暮らした“オトマン書肆(しょし)”が取り壊されているのを知り、オトマンが亡くなったことを知った今、戻れる家はここだけなんだと思ってしまう。
「ユリ、あらためてお帰りなさい。さぁ入ろうか」
ユリアンネが少し落ち着くのを待って、ラルフとアマルダが手を引いて案内してくれる。
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