第463話 久しぶりの実家2
“オトマン書肆(しょし)”で住み込み見習いをするようになってからでも、ときどきは帰省していたユリアンネ。それでも、もうこの家は本当の意味で帰ってくる場所ではない、オトマンから書店を引き継いでそちらで今後も暮らすと当時は思っていた。
この薬屋はアマルダが継ぐのだからいつまでも居られないのはわかっているが、それでも帰る家があるというあたたかさがありがたい。
そんなことを考えながら、残して貰っていた自室のベッドで眠りにつくユリアンネ。
迷宮都市トリアンに戻って2回目の朝。
昨日は宿屋だったが今日は実家なので、少し早めに目が覚めた勢いのまま、台所で朝食の用意を始めるユリアンネ。
「ユリ、まだ休んでいたら良いのに!」
「いいの、何かしていた方が気が紛れるし」
「じゃあ一緒に作りましょうか」
途中からアマルダが一緒に手伝ってくれる。
ラルフも含めた3人の朝食では、
「じゃあ料理はほとんどジーモントくんが作ってくれていたのか?」
「それじゃ、ユリの腕は磨く機会がないわね」
「だが、火魔法が使えるのは温かい食事をするのに便利だな」
など少しでも明るい方の話題に気をつかって貰っているのがわかるため、それに合わせる。
食器を洗ったりした後、ラルフから声をかけられる。
「今日も臨時休業のままにする」
「え?私のことは気にしなくても良いのに」
「いや、久しぶりに戻ってきた愛弟子の腕の確認だ。一番弟子も一緒だぞ」
「え!私も?」
ユリアンネは6年ほど前にこの家を出ていく際に、ラルフが調剤のおさらいとして実演してくれたことを思い出す。あのときにはユリアンネの実力をアマルダに見せないような気遣いがあったと思っていたが、今回は一緒であると理解する。
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