第464話 久しぶりの実家3

「じゃあ、まずは私からね」

 アマルダがカンゾウを取り出してくる。アマルダも6年前のことを覚えていたのであろう。

 薬研(やげん)に入れられたカンゾウを丁寧に砕いて粉にしていくアマルダ。父ラルフほどではないが、きちんと木目が細かく粒らしいものも残っていない。

「お姉さん、流石だわ」

「まぁ、何年も頑張っているからね。残念ながら水魔法は習得できていないからここまでだけれどね」

「ま、20歳を前にこれだけなら十分だ。下位であっても中級だ。だろう、ユリ」

 ≪簡易鑑定≫の結果でも中級下位であることを確認して頷くユリアンネ。


「じゃあ次はユリね」

「日頃に作っている傷回復ポーションを作るわね」

 魔法の袋に入れている薬草、そして薬研などの道具を取り出して作業を始めるユリアンネ。

 完全に手慣れた作業であるはずだが、師匠であるラルフや姉弟子であるアマルダに見られている緊張がある。

 乾燥させた薬草を薬研で粉々に砕き、水魔法で作り出した水に溶かし、魔力を込めて魔法回復薬(ポーション)を完成させる。


「ほぉ、これは下位ながら高級ポーションだな。王都に行ってもちゃんと訓練したんだな」

「他国の薬師の方と交流する機会があって。この丹薬なんだけれど」

 まだ初級品しか作れない丹薬ではあるが、グリーンリーフに師事して教わった丸薬に魔力を込めて作るやり方をラルフとアマルダにも共有する。


「途中から違う話になってしまったな。ユリ、よく勉強して来たみたいだな。冒険者仲間だけでなくこれらの薬で助かった人たちも多いのだろう。だが、解毒薬の扱いはまだ甘いな」

 ラルフとしてもまだ教えることがあったか、という感じで楽しそうに、解毒薬にする素材の扱いについてユリアンネに手ほどきしてくれる。おかげで中級中位までしか調合できなかった解毒ポーションであったが中級上位のものを作れるようになった。


 横で見ているアマルダもユリアンネに嫉妬するというよりは、自分も食らいつく感じで学びつつ、妹が明るい表情を少しずつ取り戻すことを喜んでいる感じであった。

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