第465話 フェルバーの悩み

 ユリアンネが実家に帰り父姉と調剤に勤しんでいる頃、シミリートは再び衛兵団の拠点に来ている。

「こちらは、我々の中隊長からの手紙だ。男爵である王国魔術師団のフェルバー大尉と格は合わないのはわかっているが」

「それでも、分隊長の上司の上司の中尉様だぞ」

「セレス!先方には申し訳ないが、これ以上の上位に上げるとなると時間もかかるだけでなく、独立派に感付かれる可能性がある。まずは現実的なところで、情報交換をさせて貰う約束の手紙になる」

「承知しました。フェルバーさんもニキアスさんもその辺りは大丈夫だと思います」

「シミ、冒険者に染まりすぎるなよ。衛兵に戻ったら階級に対する意識を改めて貰わないと」

「わかっていますよ」

「それと、な。一般人のはずのシミが何度もこの拠点に出入りするのはまずい。今ならば昔のよしみで久しぶりに帰って来たからとでも言えるが、頻度が、な」

「別の場所で会うようにしますか?」

「ダンジョンの中が良いだろう。お前、22階まで行けるようになったんだよな」

「はい、トリアンを出ていく直前はそこまでで」

「じゃあ、22階の砂漠の入口で会うようにしよう。定期連絡は3日ごとの昼。もし急ぎがあればその限りではなくここに来るか、こちらからはお前の実家の武器屋か仲間の宿屋に使いを出す」

「承知しました」


 今度は1人で魔術師団の仮拠点に訪れたシミリート。届けられた手紙を読んだフェルバーとニキアスは満足そうに頷いている。しかしすぐにフェルバーの顔が曇る。

「どうされたのですか?」

「この拠点をどう思いますか?」

「え?あ、あぁ。いつまでもここにテントを張っていると目立ちますね」

「ですのでトリアンの街の中に拠点を移そうと思うのですが……」

「え、でも半分は冒険者登録もされていなかった貴族の方では?」

「そこが悩みでして」

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