第539話 領主館への侵入3
「ここからは、叔父上の見張りも多いだろうから、少人数で移動しよう」
デレックがゼバスター以外にはユリアンネとシミリートだけを選ぶ。ユリアンネが使い魔シルヴィスを先導させて人のいないことを確認しながら、上層階に登っていく。
「もうここからは避けられないか。あの2人をなんとか出来るか?」
大きな扉の前に立っている金虎騎士団員と思われる近衛達。
ユリアンネの顔を見たシミリートが、デレック達に念押しをする。
「今から見ることは他言無用でお願いしますね」
≪睡眠≫
ユリアンネがその魔法を発動させたのと同時にシミリートが走り込んで、2人の首筋に≪睡眠≫のダガーで切り付ける。
「まさか殺したのか」
「いえ、我々も望んで殺したりはしませんよ」
崩れ落ちる2人を静かに横に寝かせた後は、ゼバスターがその大きな扉を開ける。
「デン!あなた無事だったの?」
部屋の中には天蓋付きのベッドがあり、その脇に座っていた女性が駆け寄ってくる。
「母上、そのような幼名で。普通にデレックとお呼びください」
ユリアンネ達が失笑していると思って気恥ずかしくなったのか、デレックが話を続ける。
「はい、私はトリアンの街中に避難しておりました。父上のご容態は?」
言葉にせず首を振った母を見て、ユリアンネを招く。
「父上を診て欲しい」
ユリアンネは一瞬、フスハレの代官夫人マルゴットに化けた吸血鬼モラクのことを思い出して身構えながら近づく。
明らかに憔悴した感じの男性老人である侯爵家当主インリートがベッドで目を瞑って寝ている。
少しでも効果を高めるために長い杖(スタッフ)を取り出し、≪軽病治療≫と≪回復≫の魔法を発動するが、あまり効果が感じられない。
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