第303話 王領北部への道中

 王都から北部国境の街フィノイスまでは街道が整備されているため、騎乗操作もそれほど難しくは無い。おかげで順調に北上は出来ているが、流石に1日で到着する距離でもなく、何度も野営を行うことは覚悟である。


 昼食は短時間の休憩であったため簡易にするしかなかったが、夕食はそのまま野営になると分かり、ジーモントはかまどを用意してスープなどの準備も始める。

「流石は冒険者の皆さん、準備がよろしいですね」

 この小隊の副官であるニキアスの言葉で、周りの魔術師団員の様子を見ると、干し肉とおまけ程度のものか、せいぜい肉を焼く程度の食事の準備をしている感じであった。

「少々ならばお分けすることができますが」

と言うしかない状況であり、

「悪いですね。きちんと報酬計算の時に一緒に精算させて貰いますので」

との言葉を信じて、ストックしていたハイオーク肉やそれを用いたスープを振る舞う。


「なんだこれは。いくらハイオーク肉といっても美味すぎだろう!」

「いや、ハイオークでも上位のファイターの肉なんじゃないのか?」

「それでも調理の腕がないとここまでは美味くならないだろう」

 魔術師団員には貴族の子弟も含まれると思われるのに、賞賛の声が聞こえてくるとジーモントも自尊心がくすぐられる。

「ジモ、認められて良かったね」

「これであの人達とは仲良くなれると良いのだけどな」

「ジモのおかげで上手くやっていけると思うよ。ありがとうね」


 翌朝もいつものように早めに起きて昨夕に消費したスープへの追加調理を行い、それも皆に振る舞っている。

 ジーモントの料理のファンになった団員達からは、日頃はどこで買えるのかという質問が出たり、道中で村や街を通るときには、ジーモントが食材を追加調達する時間を優先して確保してくれたりすることになった。

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