第302話 王領北部への出発

「来られましたね。では早速出発することにしましょう」

 フェルバー中尉が率いる小隊のうち騎乗できる10人ほどだけの魔術師団員が、お揃いのローブ姿で整列していた。小隊でも騎乗できない残りの団員は、後から馬車で追いかけてくるらしい。


 ユリアンネたち6人は、この小隊の臨時隊員としてフェルバー小隊長の指揮下で行動する分隊になるが、他の魔術師団員達と違い戦闘参加ではなく後方支援を行うのである。そのため、魔法使いでもない者が5人も同行できるのである。


「最初の目的地は、国境に一番近い街、フィノイスである。騎士団の先発隊はその騎乗の上手さで先に到着するはずである。魔術師団でも我々は2番目の出発隊であるが、なるべく早く到着することでフィノイスの防衛に貢献する!」

 つまり、休憩時間は出来るだけ少なくひたすら北進するとの宣言であった。


 しばらく乗ってみて分かるのだが、やはり戦馬バトルホースは体格も良いだけでなく、それだけ足も速い。またCランク魔物だけあり賢いこともあり、上に乗るものはそれだけ楽ができた。

「これは良いぞ。上の空でも勝手にちゃんと走ってくれる」

「じゃあ、シミ、たまには替わってよ。こっちは普通の馬で大変なんだから」

 肉体的には鍛えていないユリアンネはそのまま自分用の戦馬ゼラに騎乗しつつ、カミラとゾフィが交代でシミリートの戦馬ライオに乗ることになった。なんだかんだと馬に乗り慣れたシミリートとジーモントは通常の馬で決定であるが、ドワーフらしい体格のヨルクも自身に合わせた鞍や鐙(あぶみ)が通常の馬サイズであり戦馬に適用できないので仕方ない。


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