第452話 衛兵の帰郷報告2

 シミリートはトリアンに帰郷したことを、衛兵の上司であるマンファンに報告し、今の状況を教わっている。

「今の領主の家族構成を知っているか?

 高齢のインリート様はながらく子供に恵まれなかったが、今は12歳の嫡男デレック様がいらっしゃる。ただそうなると微妙なのが、ずっと後継者と思っていたインリート様の弟であるインガルズ様だ。デレック様が後を継がれると自分はまだしも自分の子供たちは侯爵家ではなくなり、適当な男爵か準男爵あたりをあてがわれるだけになる。侯爵家を自分から引き継ぐと思っていた長男たちに申し訳なく思っていたのだろう。

 そこに、インリート様が床に伏せる状況がやって来た。回復の見込みが薄いという話でインガルズ様に領主代行を任せるというほどだ。

 そうだ、正直に言うとストローデ領の領主である侯爵家のお家騒動が発端なんだ」

「そんな……」


「そう、そんな、だよな。領民や我々領兵にすると。だが、それに乗ったのが、以前から黒い噂が絶えなかったエードルフ・シャイデン男爵だ。彼も野心があり先祖からの男爵では終わる気がなく、何か騒動が起きることで自身の立場をあげることを狙ったんだ」

「トリアンの街の中で、独立派と反対派の抗争があったと聞きましたが」

「あぁ、独立戦争なんて成功しない、住民たちに迷惑をかけないように、と言うのが反対派だ。ここトリアンでも中核の、法衣貴族のアーロルト・フスハイム子爵が嫡男デレック様を支えて反対派を引っ張っている」


「マンファン分隊長も含めて、衛兵団はほとんどが反対派だ」

 セレスランも口を出し、マンファンが頷く。

「だが、先のエードルフ・シャイデン男爵やクハルリヒ・ロイヒョー準男爵を中心に独立派もいる。領主様が倒れられて、インガルズ様が領主代行をしているため独立派の方が優勢で、王国にも独立宣言を出してしまった。だが、ターナタン・ラウエルス子爵、マーヌート・ザルツラー男爵のように中立派も多い」

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