第353話 東進3
自由行動で来ているわけでないので、ルードルフの街からセルヴ大森林に、巨大蜂へのリベンジに行くこともなく、宿で休憩した後はそのまま東に向けて出発する一行。
「ここからは通ったことが無いところだな」
「山脈手前のフスハレの街、それより手前に領都があるんだよね」
「トリアンや王都と比べると街の規模が小さいだろうから、品揃えには期待しない方が良いわよね」
ここに来るまででも、少しでも時間があれば一応は各街の書店や魔道具店をのぞいているものの、食指が動く物には出会えていない。
そして何事もないままルオルゾンの領都ヒマーセンに辿り着く。
「皆は宿屋で休息しておくように」
隊長のフェルバーと副官のニキアスだけが領主館に向かうようである。ローニョレ領では領都バーアンを通過する際にも使者を送るだけであったのだが、流石に独立宣言をしたストローデ領と隣接するルオルゾン領では話すことが色々とあるのであろう。
「いよいよストローデ領に近づいたということだよな。今のうちに街で食材や薬草など調達しておこうか」
「そうね、一応は領都だし。ただ、あまり期待はしないで散策しましょうか」
“選ばれた盟友”の7人も、内戦という緊張感をそれほど感じられない街中に繰り出して行く。モンヴァルト山脈の街道に魔物が出るようになってからこの領都やフスハレを通る旅人が減ったはずであるが、その前を知らないのでそれが普通と思っている7人。
領主館に向かったフェルバーとニキアス以外の魔術師団員13人も、留守番役を残して散策に出るようである。
一方、領主館に向かったフェルバー達。
「ようやく到着か。馬もまともに扱えない魔術師達ならばそんなものか」
「大尉、一応は騎乗できる方々だけで来ているのですから、あまり非難するのも」
「そうか、もしも馬車なんかで来ると騎士団だけで用事は済んでしまうところだったな」
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