第371話 吸血ダガー
「それって、血を吸うダガーよね。黒い刀身なのが不気味だけれど」
「そうよ、≪鑑定≫魔法のスクロールでは≪吸血≫、刺さった相手から血を吸い続けるってあったわ。他にも何かわからないことがある感じだったけれど」
「で、シミ、どうしたんだ?」
「あぁ、確かに今まで黒色なのは変わっていたけれど、小さな傷はできていたんだ。ユリから預かったものだから丁寧には使っているつもりだけれど、投擲するしどうしても、な。それが今まであった傷がなくなっているんだ」
「え?確かに傷もなくて綺麗だけど、元からじゃないの?」
「いや、ほらこっちの≪麻痺≫のダガーの方には小さな傷があるだろう?こんな感じだったんだ」
「ほら、ユリ」
見せられたユリアンネも念の為に≪簡易鑑定≫を発動させると、高級下位で特殊効果ありとなった。
「確かにおかしいわ。入手したときは中級中位の品だったのに、今は高級下位って」
「まさか成長する魔剣?」
「ヨルク、なんだよ、それ」
「聞いたことがあるだけだよ。使えば使うほど成長する魔剣があるって」
「今回、レッサーヴァンパイアから血を吸ったから?いえ、これまでもたくさん吸っていたし、閾値を超えるきっかけになったから?」
「ユリ、返しておこうか?」
「私ではどうせ使わないし、シミがそのまま使っておいて。でも、たまに鑑定して確認した方が良いわね」
「うーん、トリアンに帰ったら親父やお袋に聞きたいことができたな。ドワーフとしては興味が湧くぞ」
「わかったって、ヨルクもときどき見たら良いから、そんなにひっつくな。危ないって」
「ヨルクもドワーフだったのね。いつも食べ物ばかり……」
「どこからどう見てもドワーフだろう?」
「そうね、少しは髭も生えて来たしね」
「「「ははは」」」
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