第372話 山脈への挑戦

 翌朝、予定通りフスハレの街の東にて集合した魔術師団員たち。

「モンヴァルト山脈の魔物が溢れたのに吸血鬼が関与しているという話もありましたが、我々の本来の目的は山脈を越えることです。きっと騎士団員たちはかなり先に行っています。目的と関係ないことは意識し過ぎずに追いかけましょう」

 副官であるニキアスの号令のもと、それぞれ騎乗のまま東へ進む。


 しばらくは平原だが、すぐに山脈の裾野にある森に差し掛かる。

「ここからはハイオークが出現すると聞いています。注意を怠らないように!」

 一応は護衛ということで魔術師団員15名の前後に“選ばれた盟友”の7人が分かれて進んでいる。前方にはシミリート、ユリアンネ、ドロテアの3人である。


「手伝わなくて良いか?」

「こいつらくらいなら大丈夫だ。先に行ってくれ」

 森に入ってすぐに、少数のハイオークと戦っている冒険者たちを見かけるが、先方の言葉の通り22騎の集団は通り過ぎていく。



「思ったより遭遇しなかったな」

「たまたまか、先に行った騎士団員100騎のおかげか」

 街道横に馬車を何台も停められるぐらいの空間がある場所での小休憩である。そこにたどり着くまで、数体のハイオークとの遭遇が2回あったが、いずれも街道の前方での発見であった。ユリアンネとドロテアによる魔法攻撃をトリガーに、集団でも前方にいた魔術師団員たちの魔法攻撃もあり、接近してシミリートが槍を振るう頃には敵の数も減り苦労なく前に進んで来られた。


「敵襲!」

 ゾフィの声が響く。

「休憩所は狙い目って学習しているのかな?」

「余計なことを言っていないで迎撃だ!」

 ハイオークの数も十数体程度であり、22騎が相手したため死者までは出ていないが、怪我人は発生する。

「治療を行いつつ、そのハイオークの肉で昼食とする」

「え?血の匂いで次の敵が寄って来ませんか?」

「再び撃退すれば良い」

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