第440話 コルバックの状況2

「なるほど。それでは不要な事態に巻き込まれないためにも、コルバックの街の宿屋は使わない方が良いですね」

「そう思います」

 街から帰ったシミリートは、魔術師団の中隊長フェルバーと副官のニキアスに報告をしている。


「やはり静観だけでなく片方に肩入れしている代官もいると言うことか」

「いったんここで王都などへ報告を入れますか?」

「単なる手紙の発出では漏洩の不安が残るし、団員を割いて使者にするのも……」

「狼煙を勝手には使えませんし、伝書鳩も山脈の魔物にやられるでしょうから」

「仕方ない。南のステルビア王国を経由して、ルオルゾン領都ヒマーゼンに使者を出そう。暗号化した簡易な内容の手紙を2通、冒険者に依頼しよう」


 ニキアスから預かった手紙と依頼料を持って、再びアディーレに会っているシミリート。

「ふーん、色々と訳ありということね」

「あぁ、すまないが頼りになる冒険者に依頼して貰えないだろうか」

「仕方ないね。ヘンドリクたちが意識をかえるきっかけをくれたあんたたちの頼みだ。きっちり仕事はさせて貰うよ」

「頼むな。報酬はこの通りだから」



 留守番ばかりのヨルクとユリアンネたちは、待機の間に角兎(ホーンラビット)を狩っていた。ヨルクは食事のためだが、ユリアンネは死霊魔法の試しをするためである。護衛業務といっても、ここではそれほど危険な敵がいるわけではないので、魔術師団員たちから離れた場所での狩りや魔法の試験を行っている。

 使い魔のシルヴィスには上空を飛ばせて、魔術師団員や魔物が近づいて来たら知らせるようにしてある。

「ユリ、それもったいないよな。美味そうな兎だったのに、骨の死体になったり腐った死体になったり」

「そうよね、ごめんね。ちょっと練習するには手頃だから」

「まぁ、その死体にするより前の、凍らせたり壁を作ったりするのは役立ちそうだな」

「そうね。ニキアスさんのおかげね」

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