第441話 モンブロワ再び
結局コルバックの街に入ったのはシミリートたち一部だけであり、買い物などもほとんどせずに次のモンブロワの街に向かう一行。
モンブロワは、独立を宣言したストローデ領の領都である迷宮都市トリアンの隣の街であり、王国魔術師団員たちは少し緊張するが、シミリートたちはいよいよ両親たちに近づく実感から気が昂っている。
「今日明日にトリアンに着くわけではないのですから、どうか落ち着いて」
ニキアスが団員だけでなくシミリートたちにも声をかけてくれるが、なかなかそうも行かない。
この行程でも草原の間に野営をするが、当番以外の者の眠りも浅いように思うのは気のせいではないだろう。モンヴァルト山脈のときなどに比べて魔物との戦闘もまともには発生せず、単に騎乗しての移動だけなので疲労が少ないことのみが理由でもないはずである。
翌日に森に入り何かないかと見渡していたユリアンネがある木を見つける。
「ユリ、それって棗(なつめ)か?」
「流石はジモ。でも少しだけ果実が小さいでしょ?これはサネブトナツメといってね、この種子は精神安定作用があるから、みんなの不眠に効くはずなのよ」
「そうか。たくさんあるようだししっかり採っておくか」
その言葉の通り、仲間たちが手分けしてたくさん採取してくれたおかげで22人全員に行き渡る量が得られる。
『まぁ即効性はないかもしれないけれど、精神的な理由だからプラシーボ効果もあるだろうし』
ユリアンネの意図は誰も知らないまま信じて服用されていく。
そしていよいよモンブロワの街に到着する。途中で森狼などと遭遇するが簡単に倒して来ている。
「改めて見ても、コルバックに比べると森の中の街だし魔物も居るから城壁がしっかりしているよな」
「その城壁が、この内戦でも活用されるかもしれないがな」
魔術師団員の余計な雑談が耳に残ってしまう。
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