第5話 薬師見習い改め書店員見習い?2
「ありがとうね。ユリちゃんの薬にはいつも助けられて。もう5年になるね」
「そうですね、見習いとしてお世話になっているのが5年ですから」
「あの最初のときは本当にありがとうね」
「そうですね、無理矢理でしたからね」
店主オトマンに笑いながら答えるユリアンネ。
6年ほど前にダンジョンで自身の記憶を取り戻したユリアンネ。
薬剤師を目指していた自分が転生して薬師の家庭で育っていたことを喜んだのも束の間。近所の口さがない女性たちの会話で知ったのは、自身が養女であること。ラルフの妻、アマルダの母であるルイーサが亡くなる前、アマルダが妹を欲しがったので、ルイーサと同じ銀髪、碧眼の孤児であったユリアンネを引き取ったとのこと。
当時1歳ほどだったようで、本人に全く記憶は無い。父と姉は金髪で濃褐色の瞳なのに自分が銀髪と碧眼であったのは母と同じと聞いていたのだが、血の繋がりがあったわけではないと知ってショックであった。しかし、前世で生きた18年分の精神力もあったので、何とか持ち堪えることができた。
それからは自身が養女であることを知ったと父姉に知られないように、また、ラルフの後継者はアマルダであるべきだと考えてそのように振る舞った。
18年分の経験も追加すると通常の9歳に比べて覚えも良く手際も良かったので、薬師見習いとしての能力もすぐにアマルダを追い越したのだが、それを隠していた。
さらに魔法習得についても秘密にしている。
ダンジョンでの約束のように、父ラルフはユリアンネにも魔法の指導を開始した。ラルフ自身は調剤に役立つ水魔法の初級が使える程度であったが、経験者として娘たちに基礎を教えてみたのである。アマルダは習得できずにいて今はもう諦めているが、ユリアンネはかなり早い段階で習得することができていた。
魔術語という日常では使わない言語の習得がアマルダには向いていなかったのかもしれない。ユリアンネは前世でも英語など他言語を学ぶという経験があったからか、“情報”の授業でプログラム言語の基礎を学んでいたからか、すぐに理解でき今では水魔法を調剤に活かしている。
ユリアンネが父姉に実力を隠して調剤や魔法について練習していた頃にオトマンと出会ったのである。
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