第6話 出会い

「あの時は港街に出荷する書物を届けに行った帰りだったのだよね」

「オトマンさん、もう何度目ですか、その話」

「まぁ良いじゃないか。素敵な出会いだったのだから」

「そうですか?もぉ」


 トリアンの街でも東部は海への港になっており、ラルフの薬屋“木漏れ日の雫亭”はそちらに近いエリアにある。

 オトマンは仕事帰りに腰痛の発作になり、不慣れなエリアで薬屋を探したところラルフの店舗を紹介されたのだが、来てみると閉まっていた。ラルフとアマルダは素材の仕入れに出かけており、ユリアンネが1人で留守番をしていたのだ。オトマンは別の店舗を探す余力がなく、閉まっている扉を何度も叩くので、仕方なくユリアンネが出てくる。

「あぁお嬢さん、店主さんはいらっしゃるかい?」

「いえ、ご覧の通り不在でして。しばらく帰って来ません。どうされたのですか?」

「ひどい腰痛でもう動けない。持病だが薬を切らしていて。もちろんお金は払うから、薬を貰えないかな。お嬢さん、どれが腰痛の薬かわかるかい?」

「はい、この店頭にもいくつかありますが、持病でここまで来られたということはギックリ腰ではないでしょうし。温めたらマシになりますか?いつもはどのようなお薬を飲まれていますか?」

「おや、本当の薬師みたいだね。あぁ、温めると痛みは楽になるね。そこらで買う腰痛の薬は効きにくく、よく買うようになったのは何か追加しているみたいだよ」

「なるほど。そちらで横になって楽にしてお待ちくださいね」

「あぁ、そこから選ぶのではないのかい?」

「えぇ」


 ユリアンネは奥の工房に行き、シャクヤクとカンゾウにブシを追加した調合を行い、それを持って戻って来る。

「こちらをどうぞ」

「あぁ、ありがとう」

「そのまましばらく安静になさってくださいね」

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