第7話 出会い2
ユリアンネが調合した腰痛薬を服用するためにオトマンは座り直したので、卓上にあった物が目に入る。
「おや、それは水魔法かな?」
1人での留守番であり気兼ねなくと、父の水魔法の魔導書を書き写した羊皮紙の束を見ながら練習していたのである。
「分かるのですか?」
「あぁ、魔導書も含めた書物を扱う商いをしているのでね。ちょっと拝見しても?」
ユリアンネが頷いて手渡して来るのをパラパラとめくるオトマン。
「製本はしていないが、水魔法の入門魔導書だね。この写本を作成したのは店主が?」
「いえ私ですが」
「それはすごい!見た目より年長なのかな?って、おぉ薬が効いて来たのか、腰痛が治っている」
「良かったです」
「店頭からではなかったけれど、いくらの物だったのかな」
「いえ、見習いの私が調合した物です。お金を頂くと、そもそも私の調合した物をお客様に提供したこと自体も父に叱られます。こっそりと無かったことでお帰りください」
「いや、そういうわけにも行かないよ。これでも商いをする者のはしくれ。子供から巻き上げたなんて信用問題になる」
「いえ、その子供が困るのでお許しください」
子供らしからぬ口調と態度を疑問に思いながら、自身の名前と店舗の場所を教え、ユリアンネの名前だけ聞いて退出するオトマン。
腰痛も治ったので、近所で“木漏れ日の雫亭”、そしてそこの娘の情報を聞いてまわる。
「ふむ、主人と娘2人。金髪が長女で銀髪が次女らしいから彼女は次女。店舗自体もそれなりに人気で、娘2人ともが薬師見習いで後継者にも困らなそうであると。なんと羨ましい」
オトマンは独力で書店を立ち上げたのは良いが、60歳手前の今、後継者に困っている。結婚はしたが子供に恵まれず、その妻にも数年前に先立たれて1人で運営している。
書店とは言え、仕入れた本を売るだけではなく、傷んだ書籍の修理、写本の制作・販売、かわったところでは読み書きが達者なため代筆屋もしている。街の住民すべてが読み書きを十分に出来るわけではないからである。
「よし、彼女を見習いとして勧誘しよう!」
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