第564話 見合い話

「こちらは我々が使うのをご覧になったこともあるかと。上級火魔法の≪豪炎≫です。そしてこちらは、あの吸血鬼のモラクが使用していた≪魔法消滅≫です。中級の無属性魔法で、壁魔法などを消滅させることができるものです」

「な!良いのですか?」

「はい、あの悪魔魔法の方が入手の難しいものです。魔術師団の強化ができることを思えば」

「ありがとうございます!早々に写本を作成して、お返しに参ります」



「ユリ、良かったな」

「えぇ、流石は王国魔術師団の皆さんね。市場に出回りにくい物を持たれているわ」

「ユリも相当になったと思うけれどな」

「そう?」

 戦馬(バトルホース)に乗って小山を降っている2人だが、フードに隠れたユリアンネの口元がニヤけていると想像するシミリート。


「そうだ、ユリ。衛兵団のところに行ったときにもう一つ話があったんだ」

「あら。何かあったの?」

 深刻そうなシミリートの口調に、馬を止めて振り返る。

「トリアンにいる今のうちにお見合いをしていかないか?と。今回の活躍の話を聞いた他の隊の上の方の人が娘をどうだ?と言って来ているらしい」

「ふーん。良かったじゃない」

「良くないって。で、断るのに、もう婚約者がいます!って言ったんだ」

「え?居たの?」

「居るわけがないだろう!で、ユリ、婚約者のふりをして貰えないかな?」

「(前世の物語では良くあった話よね)……嫌よ」

「そんなことを言わずに」

「私にメリットが無いわ」

「俺が旅立てなくなるかもしれないだろう?」

「残りのみんなと行くわよ」

「!……」

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