第563話 風花の中つ国3

「何2人だけで納得しているのよ。私達の方は聞いてくれないの?」

「カミラ、忘れているわけじゃないわよ。でも顔を見ていたら、結果は聞くまでもなさそうだし」

 留守番になってしまったドロテア、シャドウとフェザーを除いた、ヨルク、カミラ、ゾフィ、ジーモントそれぞれの顔を見るとスッキリした感じである。

「まぁ、今回は本当に修行という意味でトリアンを出るから、宿題を貰った感じだけど」

「となると、あちこちに挨拶に行かないと、な」



 早速の連絡先は王国魔術師団のフェルバー中隊長、ニキアス副官達である。

「王国魔術師団の少尉にこんな簡単に連絡を取って良いんだろうか?」

「って、今さらでしょう?」

 トリアン北の小山にある領主館に拠点を移していたニキアス達。面会を求めて応接間で待っていたときのシミリートの言葉に対して、部屋に入りながらニキアスが答える。

「これは、ニキアスさん、失礼しました」


 席を立つシミリートとユリアンネに、手で座るように合図をしながら答えるニキアス。

「冗談ですよ。先日の報酬等はもう既にお渡ししたと思いますが、本日は?」

「はい、出航制限が無くなれば、風花の中つ国に行こうと思います」

「え?あぁ、あの仲間の出身国ですね。なるほど」

「って、ニキアスさんは流石ですね」

「まぁ、見た目に特徴がありますからね。それにしてもやはり冒険者はうらやましいですね」

「そうですか?」

「はい。でも私はやはり魔術師団で良かったです。国に仕えて国民を守ることが夢でしたから。このトリアンでそれを実現できました」

「ニキアスさん……。あ、そうだ。これを」

 ユリアンネが悪魔魔法の写本をニキアスにプレゼントする。

「前に気になっていたようでしたので。私達、なんだかんだとニキアスさんに助けて頂いていたので」

「なんと!これは。これを貰いっぱなしは立場的に。少しお待ちを」

 しばらくして戻って来たニキアスが2冊の魔導書を提示する。

「これは、ユリアンネさんが使用していないので未習得と思われるものです」

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