第562話 風花の中つ国2

「そうか、また旅立つか。それも良いだろう。確かに、その丹薬など新たな学びになるかもしれないな」

 ユリアンネは、オトマンがもうこの世にいないため、薬師の師匠でもあった養父ラルフと義姉アマルダのところに来て、グリーンリーフに習った丹薬を見せている。

「でも、ユリは先日の領主館の毒物騒動でも活躍していたし、このトリアンで薬師のお店を開いてもやっていけるわよ。領主館で働くこともできそうな流れだったし」

「お姉さん、ありがとう。でも、あの騒動のときに活躍できたのは皆のおかげだから、自分1人の手柄とは思っていないわ。それにもう少し仲間との時間を大事にしたいの」

「ユリ……トリアンに帰って来たくないの?」

「そんなことはないわよ。ここで育てて貰って、仲間も出来て。こんなお父さんとお姉さんも居るのだから」

「ユリ……」

 アマルダに抱き締められる。胸の大きさへの嫉妬を少し覚えるが、それ以上に愛情の大きさを感じる。

「ユリ、ここには帰って来られる家があることだけは忘れないようにな。それと仲間の皆さんによろしく」

「ありがとう、お父さん……」



 ユリアンネは実家で長い時間を過ごし、暗くなってから秘密基地に戻る。

「ユリも大丈夫だったようだな。許可は貰えた感じだな」

「あら、シミはどうだったの?」

「あぁ、親の方は問題なかった。仲間達、特にユリに迷惑をかけるなって」

「ふふ。って、衛兵団の方よ」

「衛兵団の寮は流石に引き払うことになった。でも、衛兵の籍は抜かないって。今回の騒動のとき、衛兵の仲間の冒険者が居て便利だったから、と言ってくれたが、照れ隠しだろうな。マンファン小隊長の。あ、分隊長から小隊長に昇進されていたよ、曹長になって。セレスラン班長も軍曹になって分隊長に」

「シミは?」

「休職中扱いだから、昇進は無。冒険者として、衛兵の俺たちよりたくさん報酬を貰っただろうって」

「確かに。仕方ないわね」

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