第323話 ドロテア2

「じゃあ、冒険者登録も済んでいるのね」

「はい、銅級です。これは国を越えても共通というのであれば登録し直しは不要ですよね?」

「そのはずだよね。馬にも乗れる?」

「はい、引き取ってくれた方が指導してくださいました」

「そのお婆様には色々と感謝しかないわね」

「はい……」

「あ、ごめんね」

「いえ、亡くなってもうだいぶ経ちますので……」


 宿屋で女性陣の部屋を3人部屋から4人部屋に変更しようにもその空きは無いとのことで、ベッドを追加で搬入して貰う。また、ドロテアのために馬を購入したり、とらえたときに傷んだ衣服の替えなどを買ったりするためにカミラとゾフィが連れ出す。

 ドロテアのために戦馬や1辺が1mの立方体ほどの腰袋も追加購入するよう頼んであるが、お金を出したユリアンネはポーション調合もあり留守番である。


 宿屋に戻り、買ってきた衣装のお披露目会を終えた後、ユリアンネは色々と確認をする。

「孤児院で神官に魔法の手解きを受けたのであれば、回復魔法も使えるの?」

「いえ、覚えられたのは火属性だけでした。神聖王国では回復魔法が使えると優遇されるのですが、魔術師団のなかで冷遇されたのはそれも理由の一つであったかと」

「神聖王国というだけあって、やはり神官やそれに関係のある人が優遇されるの?」

「はい。単に攻撃が主な1属性だけですと……」

「それでも兵長までは出世できたのよね?」

「それは中級魔法が使えたからであり、部下も割り当てられていません」

「他の属性の可能性が無いか試したり、他の属性の魔導書を見たりは出来なかったの?」

「はい。もしかすると私だけだったかもしれませんが……」


 ユリアンネは自身が持つ各属性の初級魔法の魔導書を取り出して見せる。

「まずはこれを一通り読んでみて」

「え!?そんなこんな貴重なものを。奴隷の身に、魔法の袋や服装だけでも十分すぎるのに」

「良いから。テアが成長すると私たちも助かるから」

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