第522話 暗殺未遂3

 子爵家お抱えの薬師は置いておいて、従業員の部屋に向かうユリアンネたち。

 まずは家宰として従業員を取りまとめている男性であるが、こちらは変なプライドよりも皆が倒れて子爵の家族達を放置していることを不安視する方だったようで、素直に治療に応じていた。


「うーん、中級魔法の≪軽病治療≫より、中級上位の解毒ポーションの方が効き目があるようね。(毒毎の抗毒血清みたいなものが不要で、解毒ポーションが何にでも効くのはこういうときに助かるわよね)」

「と言うことは、急に病が広がったというよりも毒を仕込まれた可能性が高いのですね」

「はい、おそらくは。となると、料理や飲み物が怪しいですね。皆さんが共通で摂取された可能性を探してください」

「は、承知しました」

 助けられた家宰は、解毒ポーションのおかげで次々と回復していく従業員達に命じて調査を開始する。


「マンファン分隊長殿、この度は大変助かりました。誠にありがとうございました」

「は、従業員の皆さんは順次回復されているようですね。勝手に薬師の方の部屋にあった薬草なども使わせて頂きましたが」

「優先順位を見誤る者など、気にする必要はありません。子爵様には許可を頂いております」

 ユリアンネが持参したポーションでは足らなかったので、お抱えの薬師の工房にあった薬草も調合して配布していった。それでも不足している分は、元気になった従業員が調達をするため街へ走っている。


「それよりも毒の蔓延経緯はお分かりになったのでしょうか」

 マンファンは家宰に確認する。

「ここまで全員が罹患したとなりますと、おそらく飲み水と思われます。水を汲んだ水瓶、もしくは屋敷にある井戸に毒を混入されてしまったのかと」

「それは」

「はい、井戸は使用禁止を言い渡していますし、水瓶は廃棄して新しいものを調達するように指示しています。また子爵様に許可をいただき、子爵家の皆様専用であった水生成の魔道具をしばらくは皆でも使用できるようにいたします」

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