第414話 モンヴァルト山脈の西3

 冒険者たちが数十人、魔術師団員と“選ばれた盟友”で20人超の大型集団であるが、ここの魔物たちが野営中に襲ってくる可能性は十分にある。

「では、冒険者の皆さんでも見張り当番を順番にまわしてくださいね。もしも何かあれば空になった金属鍋を叩くなどの警笛を鳴らすようお願いします」

 ニキアスは冒険者集団にも念押ししたあと、魔術師団員にも夜警の交代実施を指示し、さらにシミリートたちにも同様の依頼をしていく。


「ま、俺たちは相変わらずの順番だよな」

「そうよね。ずっと前からのヨルクとゾフィ、シミとユリ、そしてジモと私。で、テアはそのどこかに順番に入って慣れて貰う。今回はシミたちの真ん中の組よね」

「はい、お願いします」

「テアはまだまだ固いわね。もっと柔らかく」

「そうだぞ、カミラのお腹のように……いや腹の中の心のように……」

 余計なことを言いかけて、カミラの目線が怖くて訂正する羽目になったシミリート。

「じゃあテア、また後でね。おやすみ」

 そのやりとりには触れない方が平和が続くと悟っているユリアンネは最初の当番のヨルクとゾフィを残して眠りにつく。

「あ、俺も。お休み!」

 続けてシミリートやジーモントたちも眠っていく。冒険者は早飯だけでなく早く寝ることも必要というが寝付きの良さは流石である。


 残されたヨルクとゾフィは、他の夜警の人たちがそれぞれの持ち場付近で動いていることを確認し、割り当てられている斜面下の方向を少し違う方向を見ながら座り込む。

「ねぇヨルクはトリアンに戻った後はどうするの?」

「ん?反乱の対処のことか?」

「それらも終わった後よ。実家の鍛冶屋を継がないわよね。お兄さんがいるのだし」

「あぁ、またその話か。独立して店を持つか旅をしながら修行をするか、まだ決まっていないなぁ。ゾフィは踏ん切りがついたのか?」

「それが……」

「まぁ互いに長子じゃないし、一緒に店でも持つか?」

「え、それって!」

「いや、やっぱり鍛冶屋と衣服屋は系統が違うからダメかな?衣服ならばカミラの工芸屋の方が近いか。でもカミラは実家を継ぐだろうし。うーん、また考えておこうか」

『まぁ、こういうヤツだよね……』

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