第507話 再度の大捕物2

 衛兵たちが踏み込もうとしている“闇ギルド”の拠点は、すべて石塀に囲まれた敷地であり、一番大きな東側の門も門扉が木製で敷地の中が見えない作りになっている。

「門の内側に4人が控えているだけで、他には建物の外に出ている人は見えません」

 ユリアンネが使い魔のシルヴィスを飛ばして中を確認した結果をマンファンに伝える。

 敷地の中でも西側に近いところに大きな建物が建っていて、あとは壁のない屋根だけの馬屋や、門の内側の小屋がある程度の造りであることは事前に確認済みである。


「よし、それぞれの門を攻撃しろ!」

 東門にいるマンファンが行った合図が、南東、北東の角に立っているカミラとゾフィに伝わり、彼女たちが腕を上げることで、通用口と思われる南門と北門の前にいる王国魔術師団員に伝わる。

 ≪火炎≫や≪火槍≫などの火魔法により木製の門扉が燃えていく。

「開き次第、中に突撃!」

 カミラとゾフィが今度は腕を振り下げて合図を伝えることで、衛兵団と魔術師団のそれぞれが燃え落ちた門の中に飛び込んでいく。特に南門と北門は通用口であり、屋敷の裏側つまり西側の隣家への敷地にも近いため、そちらへ逃げ出す者がいないように多めに駆けつけていく。


 正門と思われる一番大きな東門も、ドロテアや魔術師団員の火魔法により焼け落ちるが、その向こうには両手槍(ロングスピア)もしくは長剣(ロングソード)を構えた男が4人待ち構えている。その外見だけではこの地区の屋敷の護衛に相応しい装備であり、肉屋や倉庫の拠点にいた男たちと同じ組織の者には見えない。通常の屋敷なら4人は多い程度である。

「こんな昼間っから盗賊か!」

「何をいう。こちらは見ての通り衛兵団だ。お前たちが“闇ギルド”の一員であることは既に判明している。大人しく降伏すれば命だけは助けてやる」

「なんだと。この屋敷の兵力を見くびるなよ」


 その中の1人が首から吊り下げている笛を鳴らす。かなり甲高い音が鳴り響く。

「何をした?」

「は、人様の敷地に踏み込んだらどうなるか、身を持って知って貰おうか」

 建物以外はほぼ芝生が一面にあるような見晴らしの良い庭であり、建物の地下らしきところから坂道を駆け上がって来た獣が姿を現わす。

「Cランク魔物の牙虎(サーベルタイガー)の群れだ。素直に餌になるんだな」

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