第319話 村の奪還3
ユリアンネは≪火炎≫で狙われていた騎士団員辺りに≪氷壁≫を発動する。
石や土の壁と違って向こうが見えるのと、火魔法を操る敵に対する牽制のためである。
そのユリアンネの横では、ゾフィが神聖王国の兵に対して弓を射り、その2人の護衛としてヨルクとカミラが武器を構えて前にたつ。4人とも騎乗のままである。
門に入ったところであるので、ちょうど門を護衛するようになっており、敵味方どちらも門から中に閉じ込められた感じになっている。
「村人は逃げろ!」
シミリートが叫びながら、騎士団員に向き合っている神聖王国の兵に、馬上から槍を使って攻撃していく。シミリートの戦馬バトルホース、ライオの巨体が、ジーモントの騎馬サンドより先行して村の中心部に向かっている。
その飛び込んで来た大きな馬に乗った男が味方を蹴散らす姿を見た神聖王国の魔法使いは、魔法の発動先をその男に絞る。
「くそ!ユリ、ゾフィ、魔法使いはあそこの屋根上だ!なんとかしてくれ!」
自身も≪火炎≫を受けながら敵魔法使いに対して短剣を投擲する。≪麻痺≫と≪吸血≫のそれぞれである。先に投げた≪麻痺≫だけが太もも辺りに刺さった気配である。
「シミ!」
少し前に出て視界を確保したところで、敵魔法使いを囲うように≪氷壁≫を発動するユリアンネ。
「くそ!」
魔法使いを見つけて突っ込んで来たのか、門から逃げ出そうとしたのか、神聖王国兵の2人が走って向かってくる。
「通すか!」
ヨルクが馬ごとユリアンネの前に出たのと同様に、カミラも出てきて敵兵にショートソードを振るうが、馬上から地上の兵士に向けてでは簡単に避けられてしまう。
ただ、その時間稼ぎのおかげで≪石壁≫を馬の背の高さほどまでで発動できたユリアンネ。敵の近接武器では届かない場所から、ユリアンネとゾフィがそれぞれ≪魔力矢≫と通常の矢を放つ。
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