第375話 山脈の上部へ

「みんな良くやってくれた。怪我人は治療を行いつつ、死体の回収をして出発に向けた準備を行う」

 魔術師団も魔法の収納袋を所持しているため、倒した魔物の肉や素材は回収している。

 その横で、ユリアンネとドロテアは上位ハイオークの矢や攻撃魔法で怪我をした団員たちを治療している。


「これは夕食が楽しみだな。ジモ、頼むな」

 いつものようにおどけるのか本気か分からないヨルクの発言がある。

「任せておけ。それにしても東側だけでなく山脈のこっち側でもやはり上位ハイオークか」

「東側から来たときより味方の人数は少ないけれど、流石は王国魔術師団。このまま行けるかもね」

「この後は地龍(ドレイク)だったよな。さらには飛龍(ワイバーン)……」

「ユリのためにワイバーンの血は確保したいな」

「そんな呑気で大丈夫?前は金級冒険者たちが居たから逃げ帰ることも出来ただけなのに」

「この先には騎士団が行っているんだから大丈夫じゃないか?」

「ま、行ってみないと分からないよな」

 高級の傷回復ポーションを配るほどの怪我人はほぼ居なかったので、治療にあたっている二人以外は会話する余裕があった。


 魔術師団員の方も、何となく自分たちなら大丈夫であると油断している感じがある。

「何となく良くない雰囲気ですね」

「ふむ。シミリートさんたちのおかげで怪我への不安もないし、気が大きくなり過ぎている不安があるな……」

 中隊長フェルバーと副官ニキアスはその空気感を心配するが特効策もなく、そのまま夜を迎える。


「上位ハイオークの肉なんて、市場では滅多に買えるもんじゃないぞ!」

「さらにこの料理の腕。こんな美味いものを食べられるなんて役得、役得」

 魔術師団員たちが浮かれている様子にニキアスたちは再びため息をつく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る